Spotifyまじでこの辺にリリース年出してほしい、サブスクメインで聴くようになってから自分が知らなかった音源はたくさん発掘できてていいんだけど、音楽のトレンドとか潮流みたいなのが全然わからなくなってしまった
— メルセデスベン子 (@nomolk) 2023年8月8日
最新の音だと思って聴いてたら10年前のだったり、逆もしかり pic.twitter.com/6Y6GMjgIG7
年代関係なくいろんなものを聴けるのはいいんだけどそのうえで年代把握して初めて点ではなく線で聴けるようになってくるので…
— メルセデスベン子 (@nomolk) 2023年8月8日
サブスクの音楽配信サービスを今までGoogle Play Music(現Youtube Music)→Spotifyと使ってきたのだけど、どちらも曲のリリース年がけっこう奥に入らないと見られないのがすごく不満。曲名とアーティスト名と同じくらいの扱いでリストに表示してほしい。
例として、Spotifyの画面(スマホより情報が多そうなPCアプリ版)を貼る。
↑プレイリスト画面。リスト部分にリリース年が出ないばかりか、右側に曲のクレジットが出ているのにそこにすら出てこない。
↑アーティスト画面。人気曲が表示されるがここにもリリース年は出てこない。
リリース年を知りたかったらどうしたらいいかというと、
曲の横の「…」ボタンを押してメニューを開き「アルバムに移動」を押して……
アルバム画面にくるとようやく上の方にちっちゃくリリース年が出る。
最初からリストに出してほしい。
なぜリリース年の表示がないと困るのか、理由を以下に書きます。
音楽の文脈がわからない
例として2つの曲を聴いてほしい。
①は、Adam Fという人のCirclesという曲で、②はPink Pantheressという人のBreak It Offという曲。
この2曲を、全く背景を知らない状態で聴いたとして、どういう関係だと思うだろうか。
- 同じ曲のインストバージョン①と、ヴォーカル入り②
- ①のEPに収録されていたRemixバージョンが②
- ①の発売後に女性シンガーとのコラボレーション作品として発表されたのが②
- ①のような音楽がいったん廃れた後、リバイバル的に再評価されてサンプリングされたのが②
正解は④で、①は1997年リリースのドラムンベースの名曲、②は約25年後の2021年にドラムンベースリバイバルの文脈で①をサンプリングした、UKのシンガーソングライターの曲。
それは調べればすぐにわかるんだけど、レコメンドで流し聴きしてる時にいちいち調べない。でもリリース年さえ書いてあれば調べなくてもわかるのだ。(リリース年が①=②なら1か2、①<②で差が小さければ3、差が大きければ4)
音楽をただ「曲単位で好きか嫌いか」だけで聴くという姿勢はもちろんあるのだけど、こうやって文脈でとらえられるようになるとずっと面白くなると思っている。音楽配信サービスはユーザーが音楽を楽しむのを手伝ってほしい。
時代の音がわからなくなる
正直、自分は上の2曲については調べなくても分かったけど、それは最初のドラムンベースのブームをリアルタイムで体験したからというのもあるし、あと「時代の音」をなんとなく把握しているからというのが大きい。
時代によって音の作り方が変わってくるので、それを把握しているとある程度、年代が推定できる。①と②で比べると②の方が高音が少し抑えられて今っぽい感じがするし、フレーズ的なところでいうとたとえば②の0:35くらいのところなどでヴォーカルのフレーズに合わせてドラムとベースの音を一瞬抜く処理がされているが、こういう手法は90年代の歌ものドラムンベースにはあまり見られなかったと思う。
こういう「音で時代がわかる」っていう感覚は普段から年代を意識して聴いているからこそ生まれてくる感覚で、時間軸の情報なしでなんでもフラットにレコメンドされる状況がずっと続くと、だんだんわからなくなってくるんだろうなという気がする。
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↑これを聴いて「2024年(か少なくともここ数年)っぽいな~」という感じは今でこそわかるけど、油断するとすぐにわからなくなりそうな気がする。
あとだいたいの時代がわかったところで、正確に何年って言い当てられるわけではないので、やっぱりリリース年は書いておいてほしい。
ジャンルの流れがつかめない
音楽のジャンルというのはただの便宜的あるいは外形的な分類ではなく、それにより音楽の変遷や相互の影響関係を読み解くことが可能な、いわば「歴史そのもの」であると思っている。
知っていた方が音楽をより深く解釈できるし、また効率的に好みの曲を探したりできる強力なツールでもある。
自分は頭の中にこういう感じの地図があって、音楽を聴くときは年代と音の感じを参考に「だいたいこのへんの音だな」というのをポイントしながら聴いている。
Ishkur's Guide to Electronic Musicより引用。横軸に年代があり、縦軸は大ジャンル。年代が進むにつれて源流となったジャンルから様々なジャンルが派生している様子が示されている
※あくまで「こういう感じの」という例であって、同じものではない。また例のようにクラブミュージックに限定してもいない
こういう頭の中にあるジャンル地図というのは、上記サイトのような他の人が作った地図を暗記して得たわけではない。自分が自分の興味でいろんな音楽を聴いていく中で、リアルタイムで新しい音楽の動きを観測したり、古い音源の自分の好みのものを掘ったりしていく過程でだんだん頭の中に形成されていったものだ。
そうやって地図を作っていくうえで、年代というのは世界地図でいう経度みたいなものだ。その情報が曲とセットで得られないというのは辛い。自分は育児等で音楽から離れていた時期が15年くらいあって、その間の音楽をサブスクからしか得ていない。そのせいかピンポイントで好きな曲はたくさんあるのに体系だった地図がいつまでもできず、ぼんやりと霧がかかったままになっている。
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↑ちょっと話は逸れるが最近dreamcoreというジャンルのMIX音源をよく聴いていて、これは2020年代のムーブメントなのだが収録されている曲を調べると2016年前後のものであることが多い。
音楽を作るアーティスト側の流行ジャンルというよりも、MIXやプレイリストを作るリスナー側のムーブメントであるようだ。リリース年がわかればこういうこともわかる。
その曲がリアルタイムかどうかもわからない
これは個人的な感覚かもしれないけども……。
さっき「リアルタイムで新しい音楽の動きを観測したり」と書いたのだが、そもそもいま聴いている曲がリアルタイムなのかどうかもわからないというのが痛い。
古い曲を知って「過去に俺の知らないこんな名曲があったんだ、良……」というのと、最新の曲を聴いて「こんな新しい音楽が(またはアーティストが)出てきたんだ!!すごい!!!」と興奮するのは別の感動である。
前者はその曲に対する興奮なのだけど、後者は世の中、あるいは音楽というもの自体のダイナミズムに対する感動を含む。
新しい名曲と古い名曲は名曲という点では同じだが、楽しみ方として別なところが含まれるように思う。
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↑こういうアコースティックな音楽は事前情報なしで音だけ聴いて新旧を正確に推定するのは困難(2024年9月リリース)
個々のアーティストのキャリアにおいてどの時期の曲なのかがわからない
自分はあまりそういう聴き方はしないのだけど、特定のアーティストのキャリアを追って変遷を感じるような聴き方が好きな人もいると思う。そういう人にとっても、年代がわからないのは使いにくい仕様だと思う。
まとめ
あらゆる音楽が先入観なくフラットに聴ける環境というのは、それはそれで素晴らしいことではある。こういう背景があってこそ、生まれてくる感性もあるかもしれない。
あるかもしれない……あるかもしれないと今書いたが……正直そんなに心の底から思っていなくて、情報の欠落したインプットだという感じがする。別に年代が書いてあってもフラットに聴くことはできる。逆に年代がわからないことで覆い隠される要素が多い。と思っているので年代を表示してほしいです。
おまけ
これを書いていて気付いたのだけど、Googleで曲名を検索すると…
曲名、アーティスト名と並ぶ3番目の要素として表示している。リリース年の重要性を知っててわざとやってるんじゃないかという気がしてきた!