【3Dプリンタ】PLAとABSのいいとこどりと噂のPETGフィラメントを使う

反らない、ベッドにくっつきやすい、出力物に柔軟性があるなど、どうも良いらしいPETG。

自分はABSをメインに使っているのですが、今くらいの寒い時期には出力中に反りまくって、大物は全く出力できない状況が続きます。そのため囲いがあって熱が逃げにくい3Dプリンタへの買い替えを考えていました。しかし、そのまえに素材の方を変えてみたらどうかとふと思い立ち、PETGを試してみました。

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各社出ていますが、評判の良さそうな3D HEROのを買いました。

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左がPETGです。右はABS。
いずれも色はホワイトですが、ABSは象牙っぽい色なのに比べ、PETGはイカみたいな色です。透明感がある素材であることが分かります。

なぜPETGが良いのか(噂)

実際に使ってみる前に、代表的なフィラメントとその特徴のおさらいです。

PLA
〇低温で出力できる
〇対応プリンタが多い
×柔軟性がないので力を加えると割れる
×ヤスリがけが困難(固すぎる)

ABS
〇多少の柔軟性があるので、割れにくい
×ベッドを高温にする必要がある
×ベッドからはがれやすい
×出力中に反る

要は出力が簡単なのがPLA、出力は難しいけど扱いやすいものができるのがABSです。
それでPETGなのですが、

PETG(噂)
〇柔軟性があり、割れにくい
〇ベッドが比較的低温でも出力できる
〇出力中に反ったり剥がれたりしない

というです。まさにいいとこどりの、最高の素材に思えます。そんな都合のいいことがあってもいいのでしょうか。検証してみます。

小物を作る

まず出力するのは、Thingiverseから、こちらです

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Cuboneというのはポケモンのカラカラですね。

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頭にかぶっている頭蓋骨のキーホルダーです。(以前からABS製をカバンにつけていたのですが、先日踏みつぶしてしまいました…)
サイズは3cmちょっとの小物です。

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こんな感じでいいかな。ノズル230℃、ヒートベッド70℃。フローは少なめがいいそうなので97%、糸引きするそうなのでリトラクションも長めに10mm。

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出力スタートです!

40分後

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できたっぽい

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サポートを除去したところ。いいですねこれは!
出力中は全く反ることもなく、ヒートベッドにもよく貼りつきました。(ちなみにガラスベッド+シワなしPITです)
このモデルだと糸引きは特にありませんでした。
ただサポートがモデル本体とがっちりくっつきがちで、除去しづらいです。そこだけ難点。

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ABSも出力してみました。左がABS、右がPETGです。
色の違いがよくわかりますね。質感もかなり違って、ABSがマットなテクスチャで積層あとがよくわかるのに比べて、PETGは光を乱反射するので積層あとが目立ちません。その代わり表面のデコボコが目立つ感じ。

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外したサポート材。ABSはスポッと抜けてくれるのに比べて、PETGは少しずつむしり取っていく必要がありました。なのでちょっと面倒だし、きれいに取れない。今回はサポートがすべて頭蓋骨の内側なので気になりませんが。

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前述のとおり光を乱反射するので、輪郭はABSの方がくっきり見えます。フィギュアとか作るならABSの方がいいかも。

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とはいえよくできていたので、さっそくカバンにつけました。かわいい。

大物を作る

こんどはもうちょっと大きいもので試してみたいと思います。

先日OTTOというロボットを作ったのですが、

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この頭を、PETGで作り直してみましょう。
大物といっても7cm程度ですが。

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さっきと同じ設定でいってみます。

7時間後

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これがうわさの糸引き……。
たまたま子供が見にきて「クモの巣があるよ」と言ってました。そのくらい糸だらけです。あとなにか焦げた樹脂の塊が落ちています。なぜ。

イマイチなのでちょっと設定を変えてやり直します。

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ノズル230℃→225℃。それから第1層を見ていると樹脂が細い気がしたので、フローを102%にしてみました。ゴー!

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あ、さっきよりはかなりいいのでは。どうもうちのプリンタの場合、3D HERO PETGの適温は225℃のようです。

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サポートを外しました。やっぱりここが外れにくくて、本体側にゴミが残ってしまったりするという難点があります。ギャップ調整しても改善せず。
幸いヤスリが使えるという長所もあるので、サポートが残ってしまったら地道に削ればOK(面倒ですが)。上の写真も丸い穴の輪郭部分で少しヤスリがけをしています。

出力物を片手でつかんでグイグイ握ってみると、けっこうな弾力があります。これはいい。
前回ウッドPLAで作ったときは、ボディにはめ込むときに固定用のツメの部分が折れる→接着剤で補修、を3回くらい繰り返しました。いっぽうPETGは一度も割れることなくいけました。この点はすごくいいです。

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というわけで、これが…

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こうなりました!

感想

噂どおり、出力のしやすさと出力物の扱いやすさ、両方を兼ね備えた使いやすい素材でした!いいとこどりと言われるのもうなずける。
ただ、個人的には見た目の質感はABSの方が好きです。ここは好みの問題なので人それぞれですが。

というわけで改めて、PETGの特徴。

PETG(使ってみて)
〇ベッドが低温で済むので(ABS比)、温まり待ちしなくていい
〇出力中に反ったり剥がれたりしない
〇柔軟性があり、割れにくい(ABS以上だと思う)
〇ヤスリがけもできる
×サポート材が出力物とくっつきやすく、はがしにくかったりゴミが残ったり
×乱反射するため輪郭がくっきりしない見た目になる

印象としては、
出力しやすさ PLA>PETG>>>>>ABS
出力物の扱いやすさ ABS>>PETG>>>>PLA
って感じでした。

ABSが余裕で出力できる環境でしたらあえて使う必要はないかなと思いますが、うちのようにABSの出力が不安定だったりする場合、一度使ってみる価値はあると思います!
あとは透明感のある素材がお好きならぜひPETGをどうぞ。