Oculus lift s 買ったんですけど流行ってるし一応やっとくか的に手を出したVRが最高すぎてやばい、近況です
— メルセデスベン子 (@nomolk) September 20, 2019
Oculus Rift S を買った。そんなに積極的に興味があったわけではなくて「セールで安くなったら手を出すかも」くらいのテンションでAmazonのウィッシュリストにずっと入れていた。しかしこれもうセールは絶対こないなと確信したのと、増税前のタイミングが重なって勢いで買ってしまった。結果、めちゃくちゃはまっている。(いま考えたら増税そんなに関係なさそうな気がするけど)
【正規輸入品】Oculus Rift S (オキュラス リフト エス)
- 出版社/メーカー: Oculus
- 発売日: 2019/05/21
- メディア: Video Game
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VR、思ってたのの100倍すごいんだけど、とはいえ先行して発信してる人がたくさんいるし今さら俺が何か言うこともないか、と思って黙っていた。
しかし一昨日、何の気なしに触ったアプリがすごすぎて感動が臨界点を超えてしまったので思わず筆を執りました。
この赤丸のやつがやばい
空中に造形物を作れる Oculus Medium
こういうのは説明するより見てもらった方が早い。まず僕が作ったこの動画を見てみてほしい。
起動すると仮想空間上の何もない部屋に放り出される。おもむろに手を挙げてコントローラーのトリガを押すと、手の先からムースの泡みたいな物質が出てきて、その場に浮く。そこにムースをどんどん付け足したり削ったり、つかんで回転させてほかの角度から見たり色を塗ったりしながら、3Dのモデリングができるソフト。
3Dモデリングソフトというと、僕が普段使っているのは Autodesk の Fusion360 である。これは平面に描いた図(スケッチ)を、一方向に押し出して厚みを作ったり、回転させて線対称の立体を得たりという手順を繰り返し、立体を作っていくのが基本。慣れればどんな形状でも作れるようなのだが、あまり直感的ではない。たとえば
なんかこんなような形を作りたいと思ったときに、どうしたらいいかちょっと考えてしまう。縦の面を最初に書いて押し出すべきか、底面からやるべきか。それとも天井からか。へこんでいる部分はあらかじめへこみのある平面図形を押し出してつくるか、それとも無視して作ってからへこみの形の別の立体で切り取るか。Fusion360で立体を作る作業は、どこかパズルっぽくて、手順を積み上げていく作業はさながらプログラミングのようである。面白くはあるが、(たまに使う程度の自分にとって)直感的ではない。
さらに対象が3次元なのを無理に2次元の画面やマウスでいじっているということもあって、やきもきする場面が結構ある。Blender とかほかのソフトは使ったことがないのだけど、得意不得意はあれ、似たような制約はあると思う。
しかし、 Oculus Medium ならお絵かきするみたいな気軽さで、直感的に立体が「描けて」しまう。
造形するには文字通り空中で「描け」ばいいし、
フリーハンドのいびつな形は後で補正も可能。手でつかんで動かせるのも楽。
盛り過ぎたら削ることもできるし、
逆にでっぱらせることもできる。
もちろん色も塗れる。
こういう感じで立体物がみるみるできていく。作る作業も直感的だし、それを手でつかんで回したりもとても自然にできる。わかりやすい。
やっぱり3次元のものは3次元のUIで扱うべきだったのだ、と思わされる。
それに、同じ3次元といっても、現実世界での造形作業とも全然違う。
現実空間では造形物は空中にとどまってくれないし、あんなに簡単に膨らませたり削ったりできる都合のいい素材は存在しない。持って回したら重いし。こういうことができるのは完全にVRならではなのだ。
Virtual Reality から Real へ
で、ここまで書いても多くの人は、「ああ、仮想空間で3Dお絵かきができるソフトね」「新しいハード買うとお絵かきソフトがバンドルされてくるあのパターンね」と、「いつものアレ」的なノリでとらえてしまっているのではないだろうか。
待ってほしい。このツールはそんなおまけみたいなものではないのだ。もう少し説明させてほしい。
VRとは、自らの身体感覚を仮想世界に送り込む技術であると言っていいと思う。
そして Oculus Medium は、その仮想世界で、自分の身体感覚を使って、物理法則の違いを生かした自由な創作ができるというものだ。これは前述のとおり。
その仮想世界において、我々はゴーグルを外すことでいつでも現実に戻ってくることができる。しかしそのとき、せっかく作った創作物はどうなるのだろうか。結局、仮想世界に取り残されてしまうのではないだろうか?現実にかえってきた自分の手には、何も残ってくれないのではないか。
……いや、実は、違うのだ。仮想世界から創作物を取り出す技術を、私たちはもう何年も前に手に入れている。実例を見てほしい。
まず、これが筆者が Oculus Medium を使って作ったモデル。
そして、
モデルはエクスポート機能によりOBJファイルで取り出せる。
それはPCのスライサーソフトに読み込むことができ、つまり…
3Dプリンタにより、仮想世界のものであったモデルを、現実に取り出すことができるのだ。
さきほど、「現実空間では造形物は空中にとどまってくれないし、あんなに簡単に膨らませたり削ったりできる都合のいい素材は存在しない」と言った。
しかしこのツールは、3Dプリンタと組み合わせることによって、「造形物が空中にとどまってくれて、簡単に膨らませたり削ったりできる都合のいい素材がある」世界を実現したのである。
いや、それを文字どおり現実世界に現出させたというわけでは決してない。現実では造形物は浮かないし、そんなに都合のいい素材は、相変わらず、ない。ただ、少なくとも造形物が浮き、都合のいい素材がある世界で制作した創造物が、現実世界に存在する状況を作り出した。これは結果的に、現実にそれらが存在したのと等価といえるのではないか。
造形をするうえで、これほどの革新があるだろうか。少なくとも僕は、ひどく興奮せずにはいられなかった。
もちろん、プリントサイズの制約や、色はけっきょく出力後に手で塗装することになるなど、思うようにいかないところもある。しかしそれらは主に3Dプリンタ側の問題であり、フルカラー3Dプリンタや大判出力サービスなど、今後の技術と業界の発展が解決してくれる問題である。
ひとまずは、扉を開けた。それが、この Oculus Medium が起こした革命なのである。*1
ツールとしても高機能
さて機能の話に戻るが、ここまで紹介した内容だとちょっと初心者向けっぽい印象を受けるかもしれない。実際にはもっと機能が豊富で、
レイヤーや照明の機能もあるし
各ツールも細かい設定ができる。
作例でいえば、Youtube の Oculus Medium のチャンネルには、プロによる作例(と制作風景)の動画がいくつかアップされている。
www.youtube.com
↑エイリアンぽい生物を作っている動画。
Using Emissive Materials with Glen Southern よりキャプチャ
ロボットアニメっぽいロボも。
さらに面白いのが、VR Sculpting Battlesというリアルタイムでモデリングの対決をする大会。その場でテーマが与えられ、数分の持ち時間でモデリングするというものらしい。その映像もアップされているので見てみてほしい。
このツールがプロユースに耐えるものなのかどうかは僕にはわからないが、少なくともホビーユーザーにとってはかなり立派なものが作れる感じである。しかも言い忘れたが、これは無料のアプリケーションだ。
……という感じですので、みなさん Oculus 買いましょう。いまのところスタンドアローン端末であるOculus Questでは動かないっぽいので、Oculus rift か Oculus rift S (とそれが動くPC)が必要です。
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- 発売日: 2019/05/21
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その他のおすすめ:Google Earth VRもやばい
Google earthのVR版があるんですけど航空写真をもとに3Dモデリングされた地球の上を飛び回れて着陸操作をするとそのまま360度ビューのストリートビューに降り立ち本当にそこにいる感じになる、自宅の椅子に座ったまま1分で帰省できてしまう、思い出の旅行先にも瞬時に再訪できる
— メルセデスベン子 (@nomolk) September 20, 2019
これ今その気になればほんとに再訪できるからまだスゲーで済むけど、年取って体動かなくなってからやったり、もうなくなった場所とかに行けるようになったりしたら完全に号泣してしまうだろうなと思って、VRそのものよりもそうなった時の体験を想像して泣いてしまった
— メルセデスベン子 (@nomolk) September 20, 2019
これもプレイ動画をアップしたので興味があったら見てみてください。
その他のおすすめ2:ホームシアターとして使うとやばい
あとは遠くの山々が見渡せる眺めの良い半屋外の部屋に映画館サイズのめちゃくちゃでかい曲面スクリーンを置いて、PCの画面ミラーリングしてTwitterやYoutube見たりしている、たまにスクリーンの前に蝶や鳥が舞い込んできたりしてホームシアター体験のリッチ度が圧倒的
— メルセデスベン子 (@nomolk) September 20, 2019
VR体験についての月並な感想はさておきとにかく俺のメッセージとしては5万円で家のリビングよりでかいホームシアターシステム(不使用時は箱に収納可能!)が手に入るのでめちゃ得ということです。一体型の機種で同じことができるかわからないけどlift sならPCに映るものなら何でも出せる
— メルセデスベン子 (@nomolk) September 20, 2019
VRのデバイスのコストパフォーマンスについて、未体験の新しい体験が金額的にどのくらいの価値があると感じるかは人それぞれなので、それだけでコスパを語ることは難しい。
しかしホームシアターに関しては「現実で数十~数百万かかるものが数万で手に入る」という点において、明確にコスパがいい。
やり方ですが、いまのところ自分が見つけられている方法は2つあって、
- Steam VR の自分のルームでバーチャルデスクトップを出す(サイズがそんなには大きくならない。大画面テレビを見ている感じ。ただしいい景色の部屋で見られるし蝶が飛んできたりするので気分が良い。あとデュアルモニタにしてると2画面ともつながって出てしまう)
- Bigscreen Betaというアプリを使う。(映画館みたいなスクリーンが出せる。ポップコーンが食べられる、蝶は飛んでこないのと、屋外が見える部屋は1種類しかない)
ホームシアターを設置する部屋にこだわるなら前者、スクリーンにこだわるなら後者という感じです。でもまだ買って1週間なので、見つけてないもっといい方法があるかも。
いずれもPCで動画を流してミラーリングしているだけなので、NetFlixでもAmazonでもdアニメでも何でも見れます。アホみたいにでかい画面でただTwitterやることもできる。
しかしホームシアターとしては映画見てる途中に頭をかけないという致命的な難点がある。あと現実の手元が見えないので物を食べたり飲んだりできないという弱点もあるが仮想空間上にポップコーンを出すことはできそれなら食べられる、味と食感は空気ですがカロリーもゼロなのでプラマイゼロ
— メルセデスベン子 (@nomolk) September 20, 2019
VR全体への所感
全体的に、購入前はゲーム・仮想体験・アダルトなどのコンテンツのためのハードウェアなのかなと考えていたのですが、思いのほかツールやアプリケーションのポテンシャルがモリモリあるなという感じでした。なので、最新のエンタメとか別に興味ないしな……みたいな人も、見落としている世界があるかもしれないので一度体験してみてもいいと思う。
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あと本記事では現実とVRのかかわりについて触れたけど、VRChatみたいな仮想空間で完結したカルチャーもそれはそれでめちゃくちゃやばい感じだった。この記事を見てバーチャルマーケット3に行ってみるといいと思う。25日まで。
*1:ちなみに似たようなツールは実はいくつかあり、また業務用としては今回のVRブーム以前から似たようなツールが存在しているため、世の中にとっては必ずしも Oculus Medium だけがこの革命の主体とは言えないようである。ただし Oculus Medium の体験は筆者個人にとって完全な革命であり、それを記した文書がこの記事である、ということは断っておく。他にもFusion360とこういうスカルプチャーツールは用途が違うので単純に比較するのはどうかとか、細かく見るとこの記事には穴がある。しかし細かいことは置いといて、「ものを作る」という大きな視点で見たとき、新たな技術がひとつ時代を前に進めたと感じた、その感動こそがこの記事の主題である。