作った、といっても自分が発起人なわけではないのだけど、とにかく新しいグループができて、参加することになった。
無駄コレクティブMUUDA(ミュ~ダ)という名前で、「あまり役に立たない工作やウェブを作っているクリエイター8人が集まったコレクティブ。」と説明されている。僕はコレクティブという言葉をあんまり聞きなれなかったのだけど、Animal Collective とか Ezra Collective とかのそれだと思う。
よけいな例を挙げたせいで話が分かりにくくなった気がするが別に音楽で食っていくことにしたわけではなくて、ものを作ってる人のグループである。一人で活動してると色々大変なこともあるからなんとなく協力してやっていこうねという、小さい組合みたいな感じである。
その最初の活動として、いま渋谷で展示をやっている。先週、設営に行ったら、センター街の入り口すぐのめちゃめちゃいい場所で笑った。
これは僕の作品。
鬱陶しい風鈴
夏の暑い日に少し涼しい風が吹くと、幼少期の夏休みを過ごした祖父母の家を思い出します。
山間部でいくぶんか涼しかったあの家では、そよ風が吹くと軒下に吊るされた風鈴が不規則に揺れ、ちりんちりんと涼しげな音を立てました。
ここにあるのはそんなノスタルジーも風流さもすべて打ち消す風鈴です。
風が当たるとリズミカルに三三七拍子を奏で、聴く人の心をもれなくイライラさせます。
会場には装置を動かすためのスイッチがあるのだけど、風鈴はスイッチの入力を受けて鳴るわけではなくて、ちゃんとサーキュレーターの風に反応して鳴っているというのがこだわり。だからうちわであおいでも鳴るので見に行った人は試してみてほしい。
こういう長期展示に慣れていないので搬入にも不慣れで、作ったものを全部紙袋に雑に突っ込んで持っていったら中で絡まってひと固まりになっており、はんだ付けを外したりしながら2時間くらいかけてほどいた。余談。
他には鉄塔さんが作ったこれがすごい。
これ手作りのAIカメラなんだけど、撮影した写真から架空の子供の絵日記を作ってくれる。ちょっと怖い pic.twitter.com/ZNh8ktQq0q
— カズヤシバタ(KAZUYA SHIBATA) (@seevua) 2024年7月19日
カメラ(型のデバイス)のシャッターを押すと、目の前の光景を絵日記にして印刷してくれる。
流行りの生成AIではあるんだけど、よくできすぎていてなんか怖い。新たな人格を生み出してしまった怖さがある。鉄塔さん本人も「生み出した人格が大人であれば別にいいんだけど、子供になったとたんに急に倫理に反しているのではないかという気持ちになる」ということを言っていた。
他にも7~10くらいの作品(会期中に壊れたり足したりして増減しそう)があってどれもおもしろいので、渋谷に行く機会があったらぜひ立ち寄ってほしい。場所的にもマジで近くて笑うので。
詳細はここ→ ミュ〜ダと役に立たない夏休みの工作 | マイラボ渋谷
なんでグループを作るのか
ミュ~ダの発起人は藤原麻里菜さん。彼女のネットワークもあり、錚々たるメンバーがそろったと思う。流れで仲間に入れてもらえて、やった~という感じである。
個人で物を作っている人がわざわざグループを作る理由はいろいろあるんだけど、グループならこういういい場所での展示とかもやりやすいし、情報交換もできるし、不得意分野を補い合いつつ活動できるし、クライアントからの仕事を受ける窓口として有用だし……とかとか。
あとは我々がやっている活動の特殊性というのもあって、役に立つツールを作っているわけではなく、また「ものづくり」と言われることもあるけど別に産業的なプロダクト生産をしているわけでもなく、また面白い(≒笑える)ことが主軸なのでアートの文脈とも違う。そういうニッチ分野で活動している人たちが集まることで、ジャンル自体の存在感を増していきたいという狙いもあると思う。
ただ、いまのところ始まったばかりで実際の活動もこの展示と後述するイベントくらいなので、「仲間ができて楽しい!」というのが大きい。
錚々たりすぎるメンバーを紹介します
そういうわけで僕以外のメンバーをざっくり紹介したい。
藤原麻里菜さん
個人的にはYoutube「無駄づくり」の人というイメージだけど、のちに文筆業などしつつ株式会社無駄を設立したりと仕事の手を広げつつ、異常なまでの多作家でもある。
最近だと「パピコを1人で食べられるマウント」が公式化されたりしている。
「パピコを1人で食べられるマウント」がパワーアップして帰ってきた!
— 藤原 麻里菜 | Marina Fujiwara (@muda_zukuri) 2024年7月10日
北海道と九州、沖縄を除く「イオン・イオンスタイル」のお店にて #パピコ をお買い上げでプレゼント〜!
いろんな味を同時に楽しめるぞ!
※景品は数に限りがあります#PR #Glico #イオン先行展開中 pic.twitter.com/dIbUk8Xo0H
個人的に好きなのは、むかしデイリーポータルZの記事用に作ってもらった爆音音姫。100デシベルを超える大音量でトイレのプライバシーを守る。
爆音の音姫を作ろう
ギャル電
電子工作ギャルユニット。「ギャルが電子工作をする時代が来た」をコンセプトにとにかく何でも光らせている。
会うとだいたいこういう格好で来る。
※TBSラジオ公式サイトより引用
自分が光るだけでなく大五郎のペットボトル、兜なども光らせている。ギャルと捉える概念の範囲が広い。
なお僕と藤原さん&ギャル電の2人は、以前紹介した本「雑に作る」の共著者の関係でもある。
書籍『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』がオライリーから出ます - nomolkのブログ
カズヤシバタさん
雑に作る派とはまた違った流派。ちゃんと作れる技術をもって「ギリギリ役に立つ」(すごくは役に立たない)物を作り続けている。あと、家に3Dプリンタをアホほど持っている。
代表作はやはりこの、なんでもかっこよく登場する箱「デルモンテ」だろうか。
どんな物でもゴージャスに登場させる箱
— カズヤシバタ(KAZUYA SHIBATA) (@seevua) 2021年2月5日
【デルモンテ】の新型を製作しました。 pic.twitter.com/J8XibvrSQ5
去年トルコから工作系のYoutuberが来たとき、シバタさんを紹介したら「知ってる!会えてうれしい!」と言っていた。この作品↓を見たらしい。世界的人気者である。
Tシャツをパタパタする装置を作りました。 pic.twitter.com/Jq1Rpr0T9T
— カズヤシバタ(KAZUYA SHIBATA) (@seevua) 2023年8月14日
あずまさん、鉄塔さん
二人は共同作品も多いのでまとめて紹介させてもらおう。もともとImage Clubというユニットをやっていて、近年ではPodcastのImage Castも人気。
個人的にはあずまさんがソフトウェアの人、鉄塔さんがハードウェアの人というイメージがあるけど、どこまで厳密に分かれているのかは知らない。
Image Clubとしての代表作は「ブラジルにつながってる穴」だろうか。穴に顔を突っ込むと、(地球の裏側の)ブラジルの光景が見える。
www.youtube.com
あずまさんのソロ作として印象的なのは「Street View Random Walker さまよえる私」。
samayoeru.me
ストリートビューの上をずっと自動でさまよい続ける様子を自動更新で見られるサイト。公開当時、予想外に人気になってしまいGoogle MapのAPI使用量を賄うための緊急クラウドファンディングが行われたという心温まるエピソードも記憶に新しい。もう5年前なのか…。
鉄塔さんはカメラのレンズも自作してたりしてそのクリエイティビティは底知れないところがあるのだけど、近作でいうと「スパコーン」。
www.youtube.com
ゴム鉄砲のパワーを最大化するために作られたデバイスで、上に乗っているものにゴム鉄砲が当たると振動を検出して、乗っているものを吹っ飛ばす。
当初の目的以外にもいろんな遊びに使えそうな良いおもちゃ。
以上が僕がミュ~ダ以前から多少なりとも交流のあったメンバー。あとの二人はミュ~ダが縁でご一緒させていただくことになりました。
もにゃさん
「表現とプロダクトの発明家。 雑貨やアプリの製作を通して、表現を開発する。」ということで、アナログからデジタルまでこなす作家。
マウスの移動量に応じてネコが集まってくるだけのChrome拡張『ネッコサーフィン』
【作業を邪魔されたい方へ】
— もにゃ (@Monyaizumi) 2023年12月29日
マウスの移動量に応じてネコが集まってくるだけのChrome拡張『ネッコサーフィン』をリリースしました。https://t.co/loGeHH0IrX
こんな感じで、窓の外からやってきたネコたちがじゃれついてきます。
便利な機能はなにもありません。#ネッコサーフィン pic.twitter.com/MW0GwNydPq
中にいれた書類がフリーズする「フリーズファイル」
※もにゃさん公式サイトより
これおなじ人が作ってるの、多才すぎてずるいな!
ミチルさん
「架空のプロダクトをテーマに創作するクリエイター」。雑貨や文具などが得意分野。全部かわいくてやばい。
きのこの山のワイヤレスイヤフォン。
「きのこの山のワイヤレスイヤホン」#欲しいと思ったらRT#明治のありそうでなかった雑貨#プロダクトクリエイターミチル (@mitiruxxx) pic.twitter.com/2mfvDsM13r
— 株式会社 明治 / meiji (@MeijiCoLtd) 2023年7月11日
これはその後、台数限定で実際に販売された。すごい。
他に商品化されてるものではこんなのも。
/
— 王様のアイディア【公式】⭐️新商品続々入荷! (@kingsidea) 2024年6月13日
カニ泡ソープディスペンサー
再入荷しました📢✨
\
お待たせいたしました!
前回ゲットしそびれた方…要チェックです🦀https://t.co/Wwha5s54Fz#王様のアイディア pic.twitter.com/KbYdPYJNW7
この鉛筆削りもいい。
お好み焼きの鉛筆削り
— ミチル (@mitiruxxx) 2021年12月15日
鉛筆を削ると、かつお節のようになります。 pic.twitter.com/1LgHAERlfc
ぜんぶパッと見ただけで魅力が伝わるキャッチーさがあって、説明不要なのがすごい。動画すら要らないのは表現としてほぼ最強ではという感じがする。
ミュ~ダをよろしくお願いします
というわけでもはや何でここに俺がいるのかという感じの錚々たるメンバーがそろっているのだけど、これから一緒に活動したり仕事ができると思うととても楽しみである。
ちなみにさっき紹介した展示にくわえて、7/31にはトークショーがある。トークといっても作品の実物デモなども多数あり、ただのおしゃべりにとどまらないイベントである。この作品紹介をみてグッと来た方は絶対に面白いはずなので、ぜひ見に来てほしい。今までのボツアイデアを集めた小冊子(コピー本)のおまけつき。遠地の方は配信もあります。
MUUDA(ミュ~ダ)お披露目会~あまり役に立たない工作やウェブを作っているクリエイターが集ってしまいました
2024/7/31(水) OPEN 18:00 / START 19:00 @ロフトプラスワン
【登壇】石川大樹、カズヤシバタ、ギャル電、鉄塔、藤原麻里菜
【作品紹介のみ】ミチル、もにゃ
●入場者特典:来場者全員にボツアイデアブック(コピー本)プレゼント!
●さらに藤原麻里菜さんの発明品『ぶつかるとキレるヤンキーロボット掃除機』(実物)を追加で飲食注文していただいた方から抽選でプレゼント!!
詳細とチケットはこちら↓
www.loft-prj.co.jp
あ、あとXアカウントをフォローしてもらえると嬉しいです。
https://twitter.com/_muuda_