Misskey.ioがおもしろい話と、2020年代のインターネットノリのルーツについて

Twitterの先行きが不安なのでいくつかのSNSにアカウントを作ってみたのだが、その中でMisskey.ioがめちゃめちゃ面白い。
それが何であるかは説明すると長くなるのでこのへんの記事を読んでほしい。
www.itmedia.co.jp

Twitterとのシステム的な違いでいうと、大量のカスタム絵文字が用意されていてノート(Twitterでいうツイート)の本文中に使えるほか、特殊な記法を使うと文字装飾も可能。うまく使うとTwitterのフリート絵文字芸みたいなことまでできる。
あとカスタム絵文字はDiscordやSlackみたいにノートに対するリアクションとしても使える。(たとえば何か達成したというノートには「偉業」っていう絵文字でリアクションするのが恒例)

フォロー関係のない新しいアカウントでもローカルタイムライン(Twitterに昔あったパブリックタイムラインみたいな感じでフォローしてないユーザーの投稿もぜんぶ流れてくる)にすごい速でノートが流れていくのでそれを見ているだけで面白いし、それにカスタム絵文字でリアクションをつけていく(リアクションシューティングと呼ばれている)のも楽しい。またほとんどフォロワーがいない自分のアカウントでも何か書くとローカルタイムライン経由ですぐいくつかのリアクションがつく。

「わんぷっぷー」「デカイ」「かわいいね」のリアクションがついた様子。投稿自体も犬のカスタム絵文字を記法で拡大して貼ったもの


他にもいろいろ機能があってすごいのだがそれは置いといて、自分が面白いと思うのはユーザー全体の空気感というか、いわゆる「ノリ」のところである。いわゆるインターネットノリみたいな感じではあって、先に挙げた記事では「ノリはふたばか2010年代のTwitter」と書かれているのだが、個人的にはそういう懐古的な文脈で語っていいものだろうか、という疑問がある。

なお、本稿はMisskey.ioの古参ユーザによる分析ではなく、新参ユーザによる外部視点の感想である。また、Misskey.ioの雰囲気とかノリと呼んでいるものはここ数日のみを切り取った、現状のそれを指す。

Misskey.ioの雰囲気

個人的な印象を羅列する。

ふざけて何かをやるのではなくてピュアにふざけ「だけ」がある感じ

Twitterの現状と比較して懐古視点で求められているSNSの理想として「政治的や金儲けの話題がなく日常ツイートだけがある」というあり方があると思うが、Misskey.ioはそれではない。政治的や金儲けの話題はないがローカルタイムラインを見ていると日常ツイート(Misskeyではツイートのかわりにノートという)すらあんまりない。ないことはないけど、カスタム絵文字を使ってふざけているノートの方が目立つ(見た目が派手という理由もある)。特定のハッシュタグが流行ってみんながそれについて話すみたいな動きもない。ただカスタム絵文字をつなげておかしみのある文章にしたやつが延々流れてくる。

ミームが濃い

現状目立っている代表的なミームには、与謝野晶子とか「レターパックで現金送れは詐欺」などがある。これらは専用のカスタム絵文字が用意されているので、それを活用して遊ぶことになる。このコミュニティの独特なところは、ミームの内容がサーバに実装されたカスタム絵文字に規定されるところである。おかげで3/4時点では8万人いるユーザーが延々与謝野晶子と「レターパックで現金送れは詐欺」を擦りまくっており、めちゃくちゃ密度が濃いことになっている。これを「同じネタばかりでつまらない」と考える人もいるだろうが、個人的には限られた資源の中でしのぎを削っている感じがしてめちゃめちゃに楽しい。

カスタム絵文字の一覧はここで見られる

新たなカスタム絵文字はPatreonでSupporter以上の寄付をすると申請できるが、申請できるユーザが限られていることから、自然発生的にミームが生まれることにある程度の制約がかけられている状態であると思われる。

日常ノートもミーム遊びに巻き込まれる

先ほども触れた日常のつぶやきっぽいノートは、全く無いわけではなくて、まあまあある。あるけど投稿されたとたんにリアクションとしてミームの味付けたっぷりのカスタム絵文字がババババッとつくため、ただのつぶやきが一瞬でMisskey.io味になる。誰も一つの話題について話し合ったりしていないのに、コミュニティとしての妙な統一感というか、うっすらした連帯感みたいなものを感じられる。

(個人的に)匿名掲示板っぽい使用感

これは単に自分がまだ新しいアカウントでフォロー関係が少ないからだと思うが、ローカルタイムラインで個人を識別していない知らない人の投稿ばかり見ているので、匿名掲示板の使用感に近い。

平和

匿名掲示板という単語を出したことで悪印象につながるとよくないのであえて書くが、個人運営のサービスであることやユーザ数の少なさのせいか、ユーザは非常に自制が効いている。2ch等でありがちだった内輪ウケを狙った露悪的な振る舞いはないし、Twitterみたいに人に悪意を向けるユーザもいない。みんな非常に平和に楽しくふざけている。(※ただし下ネタはある)

以上が新参ユーザが見たMisskey.ioの雰囲気である。

Misskey.ioのノリ

でここまでは前置きで、気になっているのはノリ……というかユーモアの質の部分だ。こればっかりは実際Misskey.ioに行ってローカルタイムラインを見てもらうしかないのだが、非常に「いわゆるインターネットのノリ」だ。

Misskey.ioを使ってみてノリがすごく似てるなと思ったのは、以前自分が作った誰でも自由に改憲できる日本国憲法である。

nomolk.hatenablog.com

これを公開したときに、「古き良きインターネット」「懐しいノリ」みたいな反響が多くて、当時は自分もそうだよねーと思っていた。自分と同年代とかちょっと下あたりの、2000年代のインターネットを通過した世代のノリ。

ただ自分も含めてその世代ってちょっと露悪的なところがあって、不謹慎なネタであったり、皮肉であったり、なにかをバカにするユーモアが染みついている。それに対して日本国憲法ってもうちょっと自制が効いているというか、完全にクリーンではないものの、政治的なテーマのわりには思ったより平和な内容に仕上がった印象がある。今回Misskey.ioを見て、こういう2020年代のインターネットノリって実はただの2000年代の残党ではなく、いまだどこかで育まれているものなのではないかという気がしてきた。

で、ここでMisskey.ioの今のノリってきっとここが源流だよね……みたいなことが言えるとかっこいいのだがあいにくユーザ歴も浅いし、筆者は考えられるいくつかの候補をぜんぜん通っていなくて(ニコ動、ふたば、discordの有名サーバなど、全然通ってないのである。Twitterに安住しすぎた…)全然わからない。でもVIP的なのはちょっと違う気がするんだよな…。

カスタム絵文字でのコミュニケーションという点ではDiscordのノリなのかなと思ったけど、いくつかの有名Discordコミュニティを見てもここまでエクストリームな絵文字の使い方をしているところは見当たらなかった。絵文字で独特のミームが形成されていくところはTwitchとかVtuber文化の影響もあるのかな…。でもそれはユーモアの質というよりは枠組みの話だしな…。

Misskey自体が2014年からあるサービスみたいなので、この中で独特のノリが形成されてきた部分もあるのだろうけど、ここ1カ月で8倍くらいにユーザ数が膨れ上がっている状況なので、かなり外部のノリが流入していると予想している。それはどこで育まれたものなのかな。そして1カ月前のMisskey.ioってどんな感じだったのだろうか。もしかして増えた8万人が急速にMisskey.ioの土着文化になじんでいった結果だとしたらすごいな、等と思いながら、高速で流れていく与謝野晶子を見ている。

misskey.io
↑自分のアカウントはこれです

これはやっておいた方がいいおすすめ設定


↑設定>クライアント設定>全般>アピアランス>動きのあるMFMを有効にする、をONにしておくとノート内で文字装飾(MTM)を使ってアニメーション設定された文字や絵文字が動いて賑やかになります