先日ハンドスピナーについて書いたところ好評だったので味を占めてもう1本書きます。
ハンドスピナーを自動で回す派閥一覧
ハンドスピナーは手先の手持ち無沙汰を解消してくれて非常に便利です。
最新のAmazonハンドスピナーカテゴリ1位のやつ。先週まで1000円台のが君臨していたのに、同じ見た目で安いやつに取って変わられていました。しかしいちど冷静になって考えてみましょう。ハンドスピナーを所有したことにより我々は樹脂や金属の円盤をただ回すという単純作業を課されることになりました。これは労働です。もはや我々はハンドスピナーの奴隷としての人生を歩み始めているといっても過言ではない。
世の中にはいち早くそのことに気づいた先人がいました。彼らはテクノロジーを利用し、労働からの解放、つまりハンドスピナーの自動回転化に挑みました。
しかし神はそれを人間のおごりであるとし、怒り、そして自動化に挑む人間たちをいくつかの派閥に分断してしまいました。
上の図からわかるとおり、現在、ハンドスピナーの自動化に挑む人々(長いのでここでは「賢者」と呼びます)は、大きく3つの派閥に分類されます。
スピナーを回す機械を作るよ派、自然の力で回すよ派、スピナーを改造するよ派です。
順に解説していきます。
スピナーを回す機械を作るよ派
ハンドスピナー自体には手を加えずに、それを回すための何らかの外部装置を製作し、自動化を試みた賢者たちです。
磁力で回すよ派
スピナーの3つの突起部分に永久磁石がつけてあります。くわえて、手に持っている基板にコイルがついているのが見えると思いますが、あのコイルを電磁石として使用し、スピナーについた磁石との反発する力を利用して回転させています。
この仕組みで回転を加速するには電磁石を高速でON/OFFさせる必要があるのですが(そうでないと電磁石が永久磁石と交換可能ということになり、永久機関が完成してしまいます)、この動画の場合はリードスイッチ(磁力に反応しON/OFFするスイッチ)を内蔵することで、うまくスピナーの回転周期とコイルのON/OFFの周期をあわせています。
作り方はinstructablesにて紹介されています。
www.instructables.com
余談ですがリードスイッチは絶対に電子工作でおもしろい感じに使えそうな気がするのですが、筆者は活用アイデアが思いつかず3年くらい死蔵していました。この手があったかという感じです。
uxcell リードスイッチ シルバートーンラウンドグリーンガラス管 リードスイッチ28mm 10件セット
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自然の力で回すよ派(エコロジスト派)
電力等を使わず、自然現象から得るエネルギーのみを使用しサスティナブルにハンドスピナーを回そうとした賢者たちの派閥です。
風力で回すよ派
原理については説明不要でしょう。この方式は環境にやさしい反面、風速によって回転数が左右される、風車のブレード部分に鳥が巻き込まれてしまうことがある、風車から低周波音が発生し騒音問題を起こすことがある、等の弱点もあります。
スピナーを改造するよ派
次に最大派閥である「スピナーを改造するよ派」について説明していきます。まずは「モーターで回すよ派」から。
モーターで回すよ派
この派閥の中は2つの中派閥に分かれており、それぞれがさらに小派閥に分かれています。
言葉で説明すると長くなるので、最初に掲載した派閥一覧から抜粋した、以下の図をご覧ください。
上から順にご紹介していこうと思います。
モーターをつけるよ派・スピナーにモーターをつけるよ派
これは非常に単純ですね。ハンドスピナーの回転軸である中心部分に、モーターを固定して電気の力で回すものです。実例としては
単にホットボンドでモーターと電池を埋め込んだようなシンプルなのもありますし、もう少し凝ったところでは
ローラーを使って回すことで、モーター部分をよりコンパクトにする方法もあります。
モーターをつけるよ派・モーターさえつければ何でもいいよ派(本末転倒派)・部品でスピナーの形を作るよ派
一部の賢者たちは試行錯誤の末にハンドスピナー以外の物を回し始め、事態は混迷を極めてきます。当初は志の高かった彼らが「モーターさえつければ何でもいいよ派(本末転倒派)」に至る経緯は、憶測ですがこんなところでしょうか。
ハンドスピナーを回したい→モーターをつけよう→(スピナーにはうまくつけられなかったので)モーターをつけやすい物に付けよう→ハンドスピナーに見た目だけ似せよう
仮にこれが事実だとすると、途中で一度挫折している(スピナーにモーターをつけられていない)わけで、それを無視したうえで強引に最後までやりきる情熱がすごいです。
3本の9V電池をY字型に配置し、それぞれにファンのついたモーターを接続することで回転させています。通常のハンドスピナーのように親指と人差し指に挟むことはできないので(デカいから)外部に持ち手をつけています。こうなるともはやハンドスピナーでも何でもないのですが、一応、形だけ似せて体裁を整えているのがこの派閥の特徴です。
モーターをつけるよ派・モーターさえつければ何でもいいよ派(本末転倒派)・ゴミを回すよ派
さきほどの「部品でスピナーの形を作るよ派」は、回転機能を実現するための部品がハンドスピナーの形態も兼ねている、という点でまだ必然性が感じられるものでした。
こちらの派閥はそもそもの素材がゴミであり、「なぜそれを回そうと思ったのか」という疑問がますます深まります。
しかし実際に動画を見てみると、回っている間は本物スピナーと見分けがつかないこと、また装置としても妙に洗練されており完成度が高いことから、「ひょっとしてこれでいいのでは?」と騙されそうになります。気を強く持ってください。
モーターをつけるよ派・スピナー自体をモーター化するよ派・ブラシレスモーター派
つづいて「スピナー自体をモーター化するよ派」です。出来合いのモーターを取り付けるのではなく、ハンドスピナー自体の部品の特性を利用して、ハンドスピナーをモーター化してしまう、というものです。言い換えると、自作モーターのパーツの一つとしてハンドスピナーを使用する、ということです。
ブラシレスモーターについて説明すると長くなるのでこのあたりを参照してください。仕組みは違いますが機能としてはミニ四駆のモーターと同様、回転運動を出力するモーターです。永久磁石を取り付けて回転軸を固定したスピナーに、電磁石を組み合わせ高速でON/OFFすることで回転させています。
ここで勘の良い方ならお気づきかと思いますが、最初のほうでご紹介した「スピナーを回す機械を作るよ派・磁力で回すよ派」と原理的には同じです。
ただしむこうはあくまでハンドスピナーの外部装置として制御回路を作っていたのに対して、こちらはハンドスピナーを含めて大きな一つの装置として製作されています。設計思想の違いが明白であることから、このように別の派閥として扱いました。
こちらもinstractablesに説明があります。
ロケットエンジンをつけるよ派(過激派)
最後に過激派の紹介です。
この筒状のパーツ、エンジンといわれて想像するものとはちょっと違う気がしたのですが、正式に(模型用)ロケットエンジンと呼ばれているものだそうです。いずれにしろテーブルの天板を貫くくらいの威力があります。
エステス 1598 A8-3 モデルロケットエンジン パック (3本入り)
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上記の動画でハンドスピナーが本物でないことが不満な方は、こちらの動画もあります。
こっちはこっちでロケットエンジンではなく花火っぽいですが(パッケージがロシア語でよくわからない)、なんにしろこの過激派が、ハンドスピナーを自動で回す界のなかで最も派手な一派であることには間違いありません。
お知らせ
5年くらい前に作ったカプセル型のノイズジェネレーターを、電子工作キットにして8/5~6のMaker Faire Tokyoで販売する予定です。たぶん1000円~1500円くらい。キットには含みませんがLINE出力をつける改造も可能です。
デイリーポータルZ・ヘボコンのブースでゲット(金銭を支払っての購入)してくれよな!