でもさ、運動会のダンスだってすごく上手にできたしひらがなも読めるし、3歳になったばかりの時はできなかったことがいろいろできるようになって、同じ3歳でもどんどん大きくなってるんだよ。ずっと3歳で止まっちゃってるように思えるかもしれないけど、実際には3歳0ヵ月からはじまって1ヶ月2ヶ月と毎月毎日どんどん大きくなってる、いまはただの3歳じゃなくて3歳8ヶ月だから、ちゃんと前に進んでるんだよ、という話をしたら泣き止んだ。
そのあと機嫌は治ったんだけど少し熱が出て、夜は早めに寝た。朝には熱は下がった。
朝ごはん食べながら、話の流れで、昨日のお迎えいつもより少し遅かったね、という話になったんだけど、そしたら意外なことを言い出した。「お父さんのお迎えがいつもより少し遅かったから悲しくなって泣いちゃったんだよ」。いつの間にか泣いた理由がすり替わっていたのである。
子供が泣く理由
子供が泣く理由って、「これを買ってほしいのに買ってくれないから」みたいな単要因のわかりやすい時もあるけど、そうでないときも多い。
なんていうか、一回の「泣き」に対してひとつの理由が対応していなくて、「泣き」は複数の理由が絡みあって起きる。
そういうときって子供に「何が悲しいの?」ってきいても教えてくれないんだけど、これって、本人は隠してるわけではなくて、あるいは語彙の問題でうまく言えないわけでもなくて、きっと自分でも何が理由だか明確にわかってないんじゃないかという感じがする。
丁寧により分けていくと直接的な原因はいくつかある。誕生日が来ないとか、お迎えが遅いとか。いくつかあるんだけど、それらを全部解決する必要はなくて、昨日みたいにいくつかの理由のうち一つでも糸口をつかむことができれば、意外に簡単にポロポロと緊張が解けて、すんなり泣き止んだりする。
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昨日の話に戻ると、こどもが泣いているときに他の園児が持っている紙の王冠(誕生日の子がもらえる)をじっと見ていたので、「ハハァンこれが原因だな」と思って「なかなか4歳になれなくて悲しいの?」と聞いたら「うん」と答えた。
泣いている理由として、こちらから一つを提示すると、それが間違いでなければ「うん」と答える。それで大人は原因がわかったぞーと思って慰めたりして、子供も機嫌が治るんだけど、それも根本的な問題が解決されたから泣き止んだっていうよりも、親しい人からケアを受けたことで気持ちが落ち着いた、というだけなのではないかと思う。
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実のところ、昨日こどもが泣いた理由は、根本的には熱が出そうで身体がだるかったからではないかなと思っている。それに加えて、自分が4歳になれないことに対するもどかしさとか、お迎えが来ない間に外が暗くなっていく不安とか、いろいろあったのだろう。でも、体のだるさを含めてどの理由もそれ単体で号泣してしまうような決定的なものではない。そういうひとつひとつの感情の高ぶりが積み重なったことで、大きな不安になって、抑えきれなくなって泣いてしまうのだと思う。
あとから大人が分析するとそういうことなんだけど、(これは俺の想像だけど)本人にとってみたら、なんだか得体の知れない不安が押し寄せてきて泣いてるに過ぎない。大人は、心の中の不安の正体がなんなのか識別できるだけの経験を持っているし、その日の出来事とか現在の健康状態から論理的に考察することもできる。でも子供はそれができない。できないというか、そういう分析をする習慣がまだない。
ネガティブな気分の識別が未発達、というのもあると思う。フィジカルに体調が悪いことと、精神的に悲しいことの区別が曖昧だったりする。大人でも、無性にイライラするときに、これはお腹が減ってるからか、とふと気づくことがあったりするけど、そのへんの区別って思っているより論理的な作業なのかもしれない。
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こどもが赤ちゃんの時はそんなこと全然わからなかったけど、3歳も半ばくらいになるとむこうも表現力が高くなってきて、こうやって言葉のやり取りを通してこどもの内面を覗くようなこともできるようになった。
育っとるな、という感じがする。