電子工作をするときにAVRをよく使っています。
(写真はWikipediaのAVRの項から)
AVRというのはAtmel社のワンチップマイコンの製品名で、アセンブラやC言語でプログラムを書いて書き込むことができます。要は小さなコンピュータです。幅5mmくらいの小さな部品なのでArduino等を使うより基板がコンパクトにまとまりますし、1個100円~で買えて安い。というかArduino自体、マイコンにAVRが使われています。
このAVRなんですが製品ラインナップが結構多くて、それにくわえて同じ製品でも微妙にスペックが違う型番がいくつかあったりしてわかりにくい。
いちおう使用されるアルファベットに法則性があるっぽいのですが、網羅的に説明されている資料が見つからなかったのでここにまとめておきます。
ちなみにWeb上の情報やデータシートから勝手に法則っぽいものを見出してまとめているだけなので、細かいところで間違ってるかもしれませんがご了承ください。
型番の例
・ATtiny2313-20PU
・ATtiny2313V-10PU
・ATmega88V-10PU
・ATmega88PA-PU
基本的な名前
まずATtinyとATmegaの2種類に分けられます。ATtinyは8~20ピンくらいで安いやつ、ATmegaはピン数が多くてADコンバータとかついてて高機能なやつです。回転寿司でいうと皿の値段が違う感じです。あと古い製品でAT90のシリーズがあるみたいですが使ったことないです。
そのあとの数字がマイコンの製品名で、これがマグロとか卵とかの具体的なネタの名前です。
ここまででATtiny2313とか、ATmega88とかの型番が決まりますが、実はもっと細かい型番があるので、単に「ATtiny2313が欲しい」「ATmega88が欲しい」と思って秋葉原に行くと何種類かあって途方に暮れます。それについて理解を深めるのがこのエントリの目的です。
VとかPとか
ATtiny2313と、Attiny2313Vの違いです。まず無印の製品があって、何らかの付加機能でアルファベットがつきます。急に牛丼屋のたとえに変更しますが大盛りとかつゆだくとかチーズトッピングみたいな感じだと思います。強いて回転寿司で言えばさび抜きとかでしょうか。
V | 低電圧動作版。たとえば ATtiny2313 の動作電圧は 2.7V からですが ATtiny2313V は 1.8V から動きます。移行のためにアプリケーション側に変更の必要がない。 |
P | PicoPower。低消費電力版です。ピン配置や機能には互換性を持たせているが、動作特性が違ったり、機能も追加されている場合がある。移行のためにアプリケーション側に変更の必要がある。 |
A | PicoPower。低消費電力版です。互換品ですが、動作特性が違ったり、機能も追加されている場合がある。移行のためにアプリケーション側に変更の必要がない。 |
これは組み合わさってPVとかPAとかになることもあります。
互換性に関しては、ちょっとややこしいです。
無印とVはデータシートも共通なので、互換動作はほぼ間違いないと思っていいと思います。それがAになるとデータシートは別になる。ただし後述する移行ガイドには、互換品だから大丈夫と書いてあります。
Pの場合はデータシートは別だし、移行ガイドにも「アプリケーション側の変更が必要」と明記されています。たとえばCで書いて無印用にコンパイルしたプログラムはPに書き込めなかったりするみたいです。「Ⅱ」くらいのニュアンスで捉えたほうがよさそう。
細かい違いを知りたい場合は、Atmelのサイトの各製品のページで「More Documents...」っていうのを押すと、移行ガイド(「Migrating from なんとか to なんとか」っていうドキュメント)が出てきます。
ハイフン以降
20PUとか10PUとかです。
まず数字部分は動作可能周波数(MHz)です。回転寿司で例えるのはもはや困難ですが、ユーザーに選択権がなくただ表示されているだけの情報なので、遠いのを覚悟の上であえて言えばカロリー表示でしょうか。
ATtiny2313-20PUだと20MHzまでいけます。ATtiny2313V-10PUは10MHzまで。低電圧で動く代わりに動作可能周波数が低くなっているのがわかります。(初期設定値ではなく、最大値です。
そのあとのアルファベットですが、1文字目はパッケージ形状を指しているようです。回転寿司でいうと軍艦とか握りとか巻物とかです。
A | TQFP |
M、MM | MはモデルによってMLF(VQFN)かMLF(WQFN)、後者のときMMがVQFN |
P | DIP |
S | SOIC |
上記は一例でもっと種類があります。これだけ見るとよくわからないですがWikipediaに説明が載っていました。とりあえず冒頭に載せた写真みたいな、2列に足がついててブレッドボードとかユニバーサル基板で使えるタイプはP(DIP)です。
それ以降は、以下のような意味だそうです。趣味で使うレベルではもはや全く気にしなくていい情報です。回転寿司でいうと産地が書いてあるみたいな感じでしょうか。
H | ニッケル・パラジウム・金(NiPdAu)仕上げ |
UN | 半光沢錫 |
R |
テープとリール |
おわかりいただけただろうか。
今まで謎めいていた 「ATtiny2313V-10PU」 という型番が、実は「120円のマグロさび抜き、50キロカロリーのインド洋産を握りで」みたいなことだとわかりました。またひとつ、電子部品が身近になりましたね。