オトシンクルスの餌付け器具を作る

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※この記事ではオトシンクルスに給餌するための器具を自作しています。器具の作り方だけが知りたい人はこちらへどうぞ

オトシンクルスを飼う

メダカを飼い始めたという話を前に書いた。メダカは熱帯魚等に比べて飼うのが簡単というイメージだったけど、魚を飼う以上メダカでも熱帯魚でも同じことであって、メダカなら幼稚園児でも飼える、みたいなことではなかったのだった。

逆にいえば、メダカ飼育が軌道に乗ったいま、魚を飼う環境は整っているといえる。熱帯魚を飼うこともそんなに難しくないのだ。特に夏は気温が高いので、ヒーターすら要らない。メダカの水槽で、そのまま飼える。

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最近の水槽の様子

というわけで、熱帯魚を少し入れてみることにした。オトシンクルスという魚を2匹。

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ナマズの仲間で、水槽のコケを食べてくれる。ヤマトヌマエビもコケを食べてくれるのだが、水槽のガラス面のコケは食べられない(足が滑って壁面にとどまれないのだ)。オトシンクルスなら吸着して食べてくれる。いくつか種類がいて、いま飼っているのはオトシンネグロという。色が黒く、飼育しやすいと言われている種類である。

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壺に生えたコケを食べているところ

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ガラスに吸い付くこともできる

当初は観賞用というよりは清掃要因と考えていたのだが、飼ってみるとなかなか可愛くて愛着がわいてきている。

オトシンクルスの餌付け問題

ただ、ひとつ心配事がある。最初こそオトシンクルスはコケを旺盛に食べてくれるが、コケはそのうち食べつくしてしまい、放っておくと餓死するという。
その前に、人工餌に慣らしておく必要があるのだが、この餌付けがちょっと難しいらしい。なかなか人工餌をエサと認識してくれないというのだ。
コケがなくなるまで、時間は限られている。さっそく取り掛からねばならない。

まずエサの準備から。人口餌と一口にいっても向き不向きがあり、例えば家にあるメダカのエサは水面に浮くので、下向きに口のついたオトシンクルスは食べられない。
同じナマズの仲間であるコリドラス用のエサがいいと聞いたので、買ってきた。

丸い円盤状のペレットで、水に沈む。メダカのエサよりは幾分食べやすそうなのであるが、ここで問題があった。
ペレットを水に沈めると同時に、

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エビが抱え込み

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ピューッと持ち去ってしまうのだ。ここまでエビが器用だとは思わなかった。すごい。しかし感心している場合ではない。オトシンクルスのエサが……。

とはいえエビのせいばかりでもない。うちのオトシンクルスは壁面にばかりくっついていて、どうやら底に落ちたエサには気付かないようなのだ。
このままでは水槽のコケを食べつくし、餓死してしまう…!

前置きが長くなったが、この記事はいかにオトシンクルスにエサを与えるかという、試行錯誤の記録である。

壁につける

最初に考えたのはこれだ。水の中でペレットを少しふやかし、指で水槽のガラスにグッと押し付ける。

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こうするとしばらく壁にくっついている。この状態でしばらく放っておくとたまにオトシンクルスがやってきて、ペロペロしていく時がある。
しかし大概は

  • メダカがやってきてつつき回し、落としてしまう
  • エビがやってきて持ち去っていく

のどちらかである。ぜんぜんオトシンクルスに行きわたらないのだ。

磁石でつける

次に考えたのは、ガラスに磁石でくっつける方法。

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ネットにくるんでクリップで留めて

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ネオジム磁石で貼る。

こうすることによって壁面にエサがくっつくので、オトシンクルスにも食べられるという寸法である。

それでは、実際どうなったか見ていただこう。

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エビ団子ができた。

エサを引きはがして持ち去ることまではできないようだが、その場でエサを堪能している。ガッツリ抱え込んでいるのでオトシンクルスが入り込む余地はない。……失敗である。

ガードをつける

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100均の硬質カードケース。工作で透明な板が欲しいときはこれを使うと手軽である。

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東急ハンズで買った、商品名「コロコロ」。キューブ状の木片である。土台やスペーサーなど色々使えて、持っておくと何かと便利。

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輪ゴムとクリップで留めて…

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ガラス面に貼る。

これは防衛面では秀逸で、見事エビの襲来を退けることができた。
しかし問題は、オトシンクルスの入り口が限られてしまうところである。ただでさえ餌付けできていないオトシンクルス、結局食べにくる前に、水流でエサが落ちてしまった…。

どんなに鉄壁の防御でも、誰も食べに来ないエサを防衛していては無意味なのだ。

3Dプリンタを動員

俺は怒った。魚類め、人間様を愚弄しおって。

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文明の力を見せてやる。

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魚類よ、これは3D CADというのだ。恐れ入ったか。

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しばらく3Dプリンタを放置していたらオートレベリングの調整がおかしくなっており、ガッタガタのものができてしまった。まあいいや、一応形にはなった。これは何かというと…

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こういう感じで、エサを壁面に張り付け、かつ周りにオトシンクルスの貼りつく場所も確保できる器具だ。真ん中に入っているのがエサ。
エサは1段奥まったところにあるので、エビも持ち逃げすることはできない。また、このくらいの凹凸だとエビは足場がなくて、壁面にとどまることができないみたいだ。よってエビ団子状態も避けられた。

そして数十分後に見に行くと…

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あっ

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食べてる…!

苦節3日、ついにオトシンクルスの給餌に成功したのである!

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心象風景

……が、実はまだ完璧ではなかった。この後ほどなくして、ふやけたエサはポロッっと下に落ちてしまった。
本来は

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穴部分の拡大図。エサをひっかける三角のツメがあるのがわかりますか

こういうツメで押さえておくはずだったのが、3Dプリンタの調子が悪くうまく出力できなかったのだ。やはりちゃんとエサを固定しないとダメか。

こんどは手作りでいく

次のステップの正解はたぶん「3Dプリンタを調整しなおしてツメまできれいに出力する」なのだが、面倒でしばらく放置してしまった。どうしてもやる気にならないので、似たようなものを手で作ることにした。

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東急ハンズで買った「プラ板 1.0mm」。板材が欲しいとき、はさみで切れて楽なのでたまに使う。これ、素材屋にあるまじき、あいまいな商品名ではないか。何の樹脂なのかよくわからない。ABSかスチロールあたりかな。タミヤからも同様のものが出ている。

タミヤ 楽しい工作シリーズ No.124 白色プラバン 1.0mm厚 B4サイズ 2枚入 工作素材 70124

タミヤ 楽しい工作シリーズ No.124 白色プラバン 1.0mm厚 B4サイズ 2枚入 工作素材 70124

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丸く切って、真ん中にピンバイスで穴をあけて

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リーマーで広げる。エサのペレットが楽に収まるくらいのサイズ。

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こんな感じ。穴にちょっとバリが出てしまったので、魚を傷つけてはまずいと思ってやすりで整えた。穴あけ工具ではなくカッターで切り抜いた方がよかったかもしれない。

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穴の周囲、上下左右に穴をあける。ピンバイスで開けたけど、ドライバーセットに入っている千枚通しでもいける。
あと円の外周に近いところにも穴ひとつ。

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いま空けた4つの穴に、テグスを通して結ぶ。上下の穴が、大穴を挟んで輪っかになるように。左右の穴も同様。
テグスの結び方はどうしていいかよくわからなかったので、2本まとめて玉止めの要領でコマ結びした。

さらに、結び目が魚に当たって傷つけないよう、穴の中に入れてホットボンドで封入。(黄色いところ)

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円周の近くの穴にテグスを通して、割りばしに結んで、完成!

できたらエサのセット。真ん中の穴、十字になったテグスでエサを挟んでホールドします。

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水槽に沈めます。

壁面にくっつけるのはやめて、単に吊るすことにした。磁石でくっつけるためには設置時に水の中に手を入れないといけなくて、面倒だったので。

そして待つこと数十分…

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きた!!
写真ではわからないけど、口を高速でモグモグしている。

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落ち着いたのかずっといる。普段はただ吸い付いていて、たまにモグモグモグモグ!ってやっている。

これは、この器具がオトシンクルスにとっての安住の地になったということではないだろうか。
こうしてオトシンクルス給餌の旅はゴールを迎えた…。

審美的改善

と思ったんだけど、水槽にでかい円盤が入っていると見た目に邪魔なので、透明の素材でもやってみることにした。
前回は、不透明な方がオトシンクルスが気づきやすく、よく来てくれるのではないかと思ってプラ板を使った。しかしよく考えたら普段から透明のガラス面にずっとくっついているわけで、透明でも問題ないだろう。

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例によって硬質カードケース。

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できた。プラ板よりバリが出やすかったので、作るときはやすりかサンドペーパーを用意しておいた方がいいかもしれない。

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水槽に入れたところ。めっちゃメダカが来ている。景観的にはこちらのほうがかなりいい。
果たして、透明の板でもオトシンクルスは来るのか。

その後、十分足らずで…

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あ、いる!
しかし板の上をうろうろしていて、エサまでたどり着いていない。
この状態が数分続いたのち…

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おめでとうございます!!!!!!!!

無事、壁面からしか餌を食べられないオトシンクルスが、人工餌にたどり着くことができた。

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心象風景

オトシンクルス給餌の旅、以上でゴールインです。
拙宅の魚たちが健やかに育ってくれることを願うばかりです。

おまけ

youtu.be
※作り方を動画にしました。伝わりにくいと思いますが「Youtubeにある熱帯魚の動画」感を忠実に再現しました。見てね