筆者はフリーランスで編集の仕事をしています。プロのライターさんから他職種の方までいろんな書き手の原稿整理(書き手が書いた原稿を整える作業)をしますが、最近はAI支援を使って書かれた原稿の整理をする機会も増えてきました。
いっぽうで、読者の視点から見て、ネットの記事やブログエントリを読んで「これはAIが書いたやつだな」と気づくとがっかりする感覚があると思います。AIの書いた文章はなんか内容が薄いし、読みにくいからです。そのがっかり感の原因と、書き手がとりうる改善策について書きます。
なお、AI活用が特に効果的と思われる説明的な文章(解説文であったり、技術ブログであったり)を想定しています。自分がメインで関わっているデイリーポータルZのような、体験レポートやエッセイなどはAIに不可能なことが多すぎるのでそもそも自分で書いた方が速いと思います。
がっかり① なんかわかりにくい
悪い例)サーボモーターという電子部品の説明です。
※なお、以降も例文には一般読者の皆さんが適度になじみがなさそうな、電子工作の部品についての文章を使用しています。「よく知らない人」の立場で読んでみてください。
サーボモーターは、位置や角度を正確に制御できるモーターです。内部にモーター、ギア、制御回路、ポテンショメータ(位置検出器)が組み込まれています。入力としてはPWM信号を用いるのが一般的で、信号のデューティ比によって指定された目標位置に回転し、その位置を維持できます。
なんか全然頭に入ってきませんよね。
わかりにくさの原因を考えてみると、「全部を並列に説明しようとするので、何が言いたいのかわからん」というのが大きいように思います。
解決策:説明に強弱をつける。
改善例)
サーボモーターは、位置や角度を正確に制御できるモーターです。普通のモーターは電流を流しているあいだぐるぐる回転し続けますが、サーボモーターは「45度で止まって」という感じで指定の角度で停止させることができます。内部にギア、制御回路、などが組み込まれていて、入力としてはPWM信号を使います。
一番説明したいことを最初に詳しく書き足しました。そのぶん重要度が低いものは短くしたり削っています。大事なことは強め、大事でないことは弱める、または捨てるイメージです。全部説明しようとしないで、必要なことにフォーカスします。
がっかり② 過剰な箇条書き
あいつらなぜか全てを箇条書きで解決しようとしますよね。記事としては読みにくいです。
①と同様、強弱がないのでトピックの重要度がわからないですし、過剰に簡素なため説明不足になったり、文脈が抜け落ちたりすることも多いです。
また、端的すぎて冷たい印象にもなります。
悪い例)コンデンサについての記事の1パートだと思ってください
コンデンサの種類と用途
- セラミックコンデンサ
- 構造・材料:酸化チタンなどのセラミック材料を誘電体として使用
- 特長:高周波特性が優れており、ESR(等価直列抵抗)が低い
- 用途例:ICの電源バイパス、RF回路、デカップリング用途
- 注意点:温度特性や直流バイアスによる容量変化がある(特にX5RやY5Vなど)
- 電解コンデンサ(アルミ電解)
- 構造:アルミ箔を陽極に使い、酸化皮膜を誘電体とし、電解液を電極とする
- 特長:大容量を比較的安価に実現できる
- 用途例:スイッチング電源の入力/出力平滑、アンプのカップリング
- 注意点:極性があるため逆接続に弱く、経年劣化で容量低下や液漏れが起こる
まあそうなんだろうけど……で、何?という感じがしますよね。
解決策:地の文を入れる。強弱をつける。
改善例)
コンデンサの種類と用途
ひとくちにコンデンサといっても実はいろんな種類があり、それぞれ構造や特性が違います。使用目的に応じて、適切なものを使いましょう!下記が代表的なコンデンサの種類です。
- セラミックコンデンサ
高周波特性が優れており、ESR(等価直列抵抗)が低いことが特徴です。ICの電源バイパス用などによく使われます。- 構造・材料:酸化チタンなどのセラミック材料を誘電体として使用
- 用途例:ICの電源バイパス、RF回路、デカップリング用途
- 注意点:温度特性や直流バイアスによる容量変化がある(特にX5RやY5Vなど)
- 電解コンデンサ(アルミ電解)
大容量を比較的安価に実現できるのでよく使われます。スイッチング電源の入出力の平滑化などによく使われています。- 構造:アルミ箔を陽極に使い、酸化皮膜を誘電体とし、電解液を電極とする
- 用途例:スイッチング電源の入力/出力平滑、アンプのカップリング
- 注意点:極性があるため逆接続に弱く、経年劣化で容量低下や液漏れが起こる
見出しの下に一文入れました。こうやって適度に文章を入れると印象が柔らかくなりますし、「何の必要があってこの情報を書いているのか」といった文脈の補完にもなります。また、これは内容が薄いものでも、余白(読み手にとっての休憩)として機能します。
くわえて、箇条書き内にあった重要な要素も文章にしました(上の例では「特徴」を文章にしました)。柔らかさにくわえて強調の効果もあります。
強弱をつける意味では、箇条書き内で重要な箇所は太字にするのも有効です。
がっかり③ 一般論しか書かれていない
生成された文章は、「調べればわかること」しか書かれていないので、情報として薄い印象になります。
誰もがAIを使える時代です。AIにきいて出てくる情報だけの記事は、なんと読む価値が…ゼロ!!
解決策:自分が考えたことや、経験した事例を入れる
例)自分は/弊社は…
- こういうことを考えてこれをやりました(経緯)
- こういう理由でこれを選びました(理由、視点)
- 実際試してこういうことが起きました(トラブルシュート)
- これを使うならこうした方がいいと思います(意見)
- この方法でやってうまくいっています/行きませんでした(成功例、失敗例、コツ)
勉強会等でのLTもこの手のトピックが多いと思います。AI以前からこれらの情報の価値が高いからですね。AI以降の時代もそれは同じです。
がっかり④ ふわっとしたことしか書いてない
AIの書いた文章はとにかく具体例がない印象です。
悪い例)
さっきサーボモーターの説明を載せましたが、以下はその定番であるSG90という機種の説明です。
SG90は、そのコンパクトさと制御の容易さから、以下のようなプロジェクトで広く利用されています。
- ロボットアーム:関節部の制御に最適
- RCカーやドローン:ステアリングやカメラのジンバル制御
日本語として書いてあることはわかるけど、なんかスッと入ってこないというか、脳を素通りしていく感じがしますよね。
解決策:具体例を入れる
自分の事例に限らず引用でも構わないので、例を挙げるといいです。
改善例)
SG90は、そのコンパクトさと制御の容易さから、以下のようなプロジェクトで広く利用されています。
- ロボットアーム:関節部の制御に最適
- RCカーやドローン:ステアリングやカメラのジンバル制御
一気にわかりやすくなりました。
必ずしも動画である必要はなく、別の形で具体例を出すことも可能です。
たとえば固有名詞を含む例示。TensorFlow(機械学習ライブラリ)の説明であれば「GoogleでもGoogle検索のRankBrain検索アルゴリズム、Googleフォトの画像認識、Gmailのスマートリプライなどに使われているそうです」とか書いてあると「へー、あのサービスで!」とイメージしやすいですし、「どのへんで使われているんだろう」という想像も広がりますよね。
ほかにもプログラミングならコード例を貼ったりなど、いろんな方法によって具体的にイメージしやすくすることができます。自分が知っている情報の中で一番具体的なことを書くとよいです。
がっかり⑤ 文字しかない
AIで画像単体の生成は可能であるいっぽう、記事を生成してもらった場合は全部文字になっちゃうので、わかりにくいです。
悪い例)Raspberry Piという基板型コンピュータのヘッダ(コネクタ)の位置と、そのピン番号についての文章です。想像しながら読んでみてください。
Raspberry PiのGPIOピンは、基板上に40ピンのヘッダとして実装されています。
ボードをUSBポートを下にして配置した場合、GPIOヘッダーは右上に位置し、2列×20行の縦並びになっています。列方向に見て:
- 左列:物理ピン番号で奇数番(1, 3, 5, ..., 39)
- 右列:偶数番(2, 4, 6, ..., 40)
物理的には、USBポートから最も近い位置にピン1(3.3V)、その隣(右)にピン2(5V)があり、そこから下方向にピン番号が昇順に並んでいきます。
想像できました??Raspberry Piに馴染みのある人ならできると思いますが、そうじゃないとできないですよね。
解決策:図を入れる
改善例)
こうした配置図だけでなく、概念図、構成図、写真、チャート、比較表など、あらゆる図表は理解を助けてくれます。
図はAI生成しても良いのですが、イメージイラストのようなものを除くと意外に思ったものを作るのは難しいので、引用できるものがあれば適切な引用表記と一緒に引用する方が早いです。
がっかり⑥ 表現/文章の癖がなんかAIっぽい
これはもはや例を出すのも難しい「匂い」みたいなものです。
解決策:一部書き直す
なんかここAIっぽいな…と思ったところを書き直したりしています。堅苦しすぎるところをちょっと軽い言い回しに変えるとか、軽い冗談を混ぜるだけでもAIっぽさは薄れます(他人の原稿に編集者が勝手に冗談を足すことはありませんが…)。
これについてはまだ感覚的に処理している段階なので、もうちょっと考えがまとまったらまた書くかもしれないし書かないかもしれません……。
まとめ
執筆者の立場からは、これらのことはプロンプトの工夫で克服可能かもしれません。プロンプトに詳しい方はぜひチャレンジしてみてください。
自分は執筆にAIをあまり使っていなくて、後工程である原稿チェックのほうが経験値が高いので、その立場で見えているものをいったんご紹介しました。
AI生成記事がっかり問題の核心は、AI生成であるかどうかではなく、記事に読むに値する情報と読みやすさがあるかどうかだと思っています。上記のような作業は決して「AI生成のテキストを手書きと偽装する」ようなものではなく、「AI生成の記事を十分に価値のある読み物に変える」作業です。クソ記事を濫造するのではなく、ひと手間かけていい記事に育ててから世に出してあげたいですよね。
当方こんな感じの仕事をしておりますので、技術ブログに編集を入れたいな、という企業さんがいらっしゃいましたらぜひお気軽にお声がけください。
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