9,000円台の激安3Dプリンタ、101Heroの使用感&使用上のノウハウ

今年の夏にKickstarterに出ていた、めちゃくちゃ安い3Dプリンタを入手しました。79ドル(9,300円くらい?)。ふつう安価なものでも3万円台なので、価格的には圧倒的破格です。

www.kickstarter.com

7月に出資して、うちには先々週届きました。こういうのが出力できます。

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ちゃんと3Dプリンタしてます。この値段で3Dプリンタが買えると思うとコストパフォーマンスは圧倒的。完全におすすめです。(でも買うのはもうちょっと読み進めてからにしてください。)

家に3Dプリンタとかいらんだろと思っていましたが、実際あるとちょっとした小物がサクッと出力できてとても楽しいです。先日はクリスマスツリーのオーナメントを作りました。おもちゃも作ってくれるので子供が大喜びです。

余談ですが、完成までにプロジェクトをウォッチしてたのがめちゃくちゃ面白くて、このあたりの話を先日fabcrossに寄稿しましたので、年明けくらいに記事が出ると思います。

以下、使用感についてと、現時点までに溜まったノウハウについて共有したいと思います。

性能について

基本的にはちゃんと造形できます。ただ、ここは安物だな、と思った点を箇条書きで書きます。

  • 印刷速度が遅い。実用速度は 12mm/s くらい。
  • 精度は安いなり。ステージに対して垂直な面は、きれいに平面にならずちょっとゆがむ。
  • 鋭角が潰れる。鋭くとがった形状のものを出力すると角が丸くなっちゃったりディテールが潰れたりします。鈍角なら平気。
  • プリントサイズは10cmが限界という噂がある(試してない。仕様だと15cmと書いてあるけど)
  • 試してないけどABSを出力できるまで温度が上がらないという噂がある。PLAは平気
  • ヒートベッドはありません。ただのガラス版。

以上です。おもちゃ以上、本物未満という感じ。
ギアとか出力して部品として使いたい、みたいな人はやめた方がいいです。
置物を作りたいとか、スマホスタンドみたいなちょっとした小物を安く作ってみたい、という人は向いてると思います。

買いか?

以上のように個人的には非常におすすめの製品です。また、現在は公式サイトにて一般注文も受け付けています。今すぐ買うべきでしょうか?
実は、12/22現在、まだその時ではありません。

  • 初期不良が高確率
  • 初期不良交換を含むサポートが機能していない
  • Kickstarterのリワード分がまだ出荷完了していない

上記の理由より、注文しても届かず、届いても壊れており、交換も不能、という状況が普通にあり得ます。
希望的観測としては、リワード分の発送が終わって落ち着いたらサポートも機能し始めるかもしれません。Kickstarterのコメントページを見つつ状況をうかがって、これらの問題が解決していそうなら購入しましょう。

組み立て上の注意点

ここからは、製品を持っている人向けのノウハウです。(日本人で何人いるのかわかりませんが)
組み立て方法は添付のマニュアルのほか、vimeoに動画がアップされています。

Quick Start Guide of 101HERO Pylon 3D Printer from 101HERO on Vimeo.

が、これは罠なので、この通りに組み立ててはいけません

優先すべきこと

101Heroには4つのステッピングモーターが搭載されていますが、このモーターに含まれるギアがとても割れやすく、初期不良または組み立て時の破損の大きな原因となっています。
なのでこのギアに負荷をかけないように組み立てるというのが最優先事項です。

モーターを壊しにくい手順

vimeoを見ていると途中でエクストルーダを固定するロッドを手で動かす工程があり(2:48あたり)、ここでモータが壊れる可能性があります。これを回避するため、3Dプリンタの初期化動作を利用します。

  1. 組み立て前にマニュアルの7ページを見て、先に配線を済ませます
  2. SDカードをFAT32形式でフォーマットし、公式のダウンロードページから「BACK HOME」のファイルをダウンロード。SDカードに書き込みます
  3. ACアダプタを挿し、SDカードをスロットに挿入した状態で101Heroの電源を入れます(コントローラー側面にスイッチがあります)。このときベルトが動くので、梱包材などはあらかじめ外しておいてください。
  4. ベルトが動いて、ロッドが自由に動かせるようになったら準備OKです。

あとはいったん配線を外し、マニュアル通りに組み立ててください。
また、この時点で動かないモーターがあった場合は初期不良なので、サポートに連絡しましょう。(返事があるとは限らないのですが)

その他の、マニュアルに書かれていない注意点

  • スタンドモジュール(ベルトがついてる部品)の配置は、上から見て、A→B→Cを反時計回りに並べます。逆にすると出力物が鏡像になります。(A、B、Cはケーブルに書いてあります)

組み立てに関しては以上です。

トラブルシューティング

うまく動作しない場合は、以下を確認しましょう。

動かない
  • すぐには動きません。電源を入れて2~3分後くらいに動き始めます。
  • ACアダプタが挿してあるか?
  • SDカードはFAT32でフォーマットしたか?(たいていのSDカードはFAT32でフォーマットされていません)
  • gcodeデータは「101hero」というファイル名で保存したか?(拡張子なしです)
うまく出力できない/出力物がおかしい
  • フィラメントは奥まで入れた?(かなり深い)
  • フィラメントを入れた後、ふたについているネジをしっかりと締めたか?
  • 101Hero本体の上に物を置いていないか?(フィラメントのロールを置いていたら出力物の形が乱れました)
  • どうしてもうまくいかない場合、フィラメントを変える(付属のフィラメントはあまり品質が良くありません。記事の末尾におすすめ情報あり)
  • マスキングテープも変える(同上)
  • マスキングテープを変えてもフィラメントがうまくステージにくっついてくれない場合、マニュアルの10ページにキャリブレーション(高さ調整)のやり方が書いてあります。面倒ですが試しましょう。
クリップが小さくて挟みにくい
  • でかいの買え
その他
  • Facebook上のユーザグループにかなりの情報が蓄積されているので、英語が読める人であれば見に行きましょう。このエントリの情報も半分くらいはFacebookグループから仕入れたものです。

USBプリントのやりかた(Developer Edition のみの機能)

以下はWindows向けです。

  • スライサーは Cura 15.02.1 を使います。他のバージョンではうまく動かないらしいです。Repetier-Hostも試しましたがうまく動きませんでした。
  • Curaの設定は下記で良好でした。

File>Machine Settings
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Basicタブ
※Supportはサポート材の設定なので適宜変更してください
f:id:slideglide:20161222215022p:plain
Advancedタブ
f:id:slideglide:20161222215110p:plain

  • 設定が終わったら、STLファイルを読み込んで、画面上のアイコンが3つ並んでいるところにある「Print With USB」→「Connect」→「Print」です。
  • 公式のダウンロードページに「Drive software of connecting Computer」というのがあるので入れてみてもいいかもしれません。(自分は入れたかどうか記憶にないです…)
  • USBケーブルをつないだだけで電源ランプが光りますが、忘れずにACアダプタをつないで電源も入れてください。
  • ちなみにケーブルのコネクタはUSB TYPE-Bです。プリンタとかによくついてます。

USBプリントは何度か試しましたが、ずっとパソコンの横に置いておかないといけないので思いのほか不便でした。gcodeを保存してSDカードに入れたほうが便利です。

ネットで落としてきたSTLデータをSDカードで出力する

  • 上記のUSBプリントの手順と大体同じですが、STLファイルを読み込んだ後、「Print With USB」を押さずに File > Save Gcode です。適当な名前で保存したのち、拡張子なしの「101hero」に改名してSDカードのルートに置きます。
  • 保存時に「101hero」の名前で保存しても、勝手に拡張子がつくのであとで消しましょう。

フィラメントとマスキングテープ

3Dプリント用のマスキングテープは以下の2つが定番のようです。現在なぜか343の価格が高騰しているので、243Jを買った方がいいと思います。

フィラメントは以下が最安でした。ちゃんと使えています。(一番上の写真はこれで出力しました)
[asin:B01HRA36TW:detail]
ただ500gでこの値段なので、重量あたりでいうと最安ではないです。1kgのやつだとレビューで見る感じではこのあたりがよさそうです。

以上、レポっす。

追記

メールで質問をいただきましたので回答のみ追記します。

フィラメントの交換方法

フィラメント交換時は、エクストルーダの蓋を開けて、フィラメントを上に軽く引っ張りながら電源を入れます。ノズルが温まってくるとスルスルっと抜けてきます。ぜんぶ抜いた後は適当な3Dデータを出力すると下からもある程度排出されます。
その後、一旦止めて組み立て時と同じように新しいフィラメントを入れ、また適当なデータを出力すると前後のフィラメントが混ざったものが出てきますが、少したつと新しいフィラメントに入れ替わります。

出力途中でフィラメントが切れた場合、交換は可能か?

一時停止の機能がないので(リセットボタンを押すと最初からやり直しになってしまいますし)、途中でフィラメント交換はできないと思います。途中で切れたら最初からやり直す必要があります。
USB接続で出力していてスライサー側に一時停止機能があればもしかしたらできるかもしれませんが、今のところそういった機能は見つけられていません。