【3Dプリンタ】ぐにゃっと曲げられる柔らかい樹脂、TPUは怖くないよ

3Dプリンタで使われる代表的なフィラメントといえばPLAとABS、次点でPETGですが、いま使っている3Dプリンタ、QIDI TECHのX-MakerはTPUにも対応しているのをふと思い出したので試してみました。

TPUというのは熱可塑性ポリウレタンの略だそうで、特徴としては弾性があり、曲がります。スマホケースのうち柔らかくてスマホにベロッとかぶせるやつはだいたいシリコンかTPUで、比較的固い方がこのTPUです。

今回使ったのは、評判がよさそうだったサインスマートのTPU樹脂です。

TPUには柔らかさを表すなんとかAというスペックがあり、うちのX-Makerは95Aに対応していました。Amazonのページには書いてありませんが、サインスマートのサイトによるとこのフィラメントは95Aだそうです。

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スプールは普通の20cmのより少し小さいです。

フィラメントを触ってみると、いつものカリッと固い乾麺みたいなフィラメントと違い、ぐにゃぐにゃしています。

薄いものを作る

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柔らかい素材ということでとりあえずスタンプでも作ってみます。
土台部分の厚み2mm、スタンプの絵の部分は厚み1mmにしてみました。

ちなみに文字のハンコを作る方法はネットにたくさん載っているのですが、絵のスタンプを作る方法はなかなか見つからずちょっと試行錯誤しました。
結局、

1. 画像をレタッチソフトで2階調化したあと、PNGで保存
2. このサイトでSVGに変換
3. Fusion360でスケッチの編集中に、挿入→SVGを挿入
4. スケッチ編集を終了して、押し出しでスタンプ化

という手順でやるとサクッと作れることがわかりました。
終わってから気づいたのですが、スタンプにする絵は左右反転しておかないと捺したとき逆向きになってしまうので注意です。

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スライサーへ。

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出力中

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できました。

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いい感じ。もっと取り扱いの難しい素材かと思って今まで手を出さずにいたのですが、普通に出力できてしまったので拍子抜けです。
ちなみにスライサーの設定は、最初TPU用プリセットの220度でやっていたら少し糸引きがあったので、最終的にこんな感じにしました。

  • 出力温度 200℃
  • 引き戻し距離 5mm
  • 引き戻し速度 60mm/s

他はスライサーのプリセットどおりですが、参考までに書いておくと、出力速度は30mm/s、ベッド温度60℃、冷却ファンONです。
あとこれはX-Makerユーザ限定の情報ですが、メーカー推奨によるとTPU出力時はフィラメントチューブを外します。本体フタは推奨状況が不明なのですが、とりあえず上だけ外しておきました。

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つぶしてみると、固さはこんな感じでした。PLAやABSとは比べるまでもないやわらかさですが、ゴム印よりは固いので、スタンプの絵柄部分は2mmくらいの厚みにしても良かったかも。

立体を作る

今度はもうちょっと大きいものも出力してみます。

Thingiverseから、このお化けです。

https://www.thingiverse.com/thing:1101793

こういう高さのあるものは、柔らかい樹脂だけに出力中にプルプル震えてしまい、上の方の層が乱れてきそうに思うのですが、どうなるでしょうか。

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……

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難なく出力できました。
ヒートベッドへの食いつきはかなりしっかりしており、反ってしまったりということもあまり起きなそうです。やはり思っていたより扱いやすい樹脂です。
ただ糸引きは少し発生してしまいました。フィラメントのくせとしては、PETGに近い印象です。

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そしてやわらかい。中が空洞のモデルなので握るとよく潰れます。
ただ、ぐにゃぐにゃなのを期待するとそこまででもないです。タイトルには「ぐにゃっと」と書きましたが、実際は「ゴワッと」くらいの感じです。

柔らかさを生かす

最後に、実用的?なものを一つ作ってみます。

こどもがお小遣いをためておもちゃの銃を買ったのですが、コルク玉をなくして困っていたので作ってみます。

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できた

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銃口にぴったり。弾性があるのでしっかりフィットしてくれます。
インフィル15%で作ってみたところ、コルク玉よりも全然やわらかいです。インフィルの量である程度固さがコントロールできそうな気がします。

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お前に娘はやらん!帰れ!

その前にもABSで弾を作ってあげていたのですが、銃口も弾もおたがい硬いのでフィット感が弱く、レバーを引く際などに弾が落ちてしまうことがありました。これなら確実に撃つことができそうです。
やわらかいので、万一、人にあたっても痛くなさそうなのもよいですね。

保管時は除湿を

最後に注意点として、TPUフィラメントは湿気に弱いと聞くので、保管時は気を付けた方がよいかもしれません。
僕はジップロックのLにシリカゲルと一緒に入れて保管しています。

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今回使ったフィラメントはちょっと小さめサイズですが、PLAやABSのよくある普通サイズのスプールは直径20cmで、いずれもジップロックのLにちょうど入ります。
この保存方法で実際のところどのくらいの差が出てくるのか、比較実験したことがないのでよくわかりませんが……。


僕が使っている機種、QIDI TECH X-Makerの情報をまとめています。激おすすめの機種なので良かったらどうぞ。

nomolk.hatenablog.com