電子工作とアクアリウムのインターネットの違い

以前から電子工作をやっていましたが、最近アクアリウムに手を出したことによって、両業界の違いが分かってきました。
今日は、電子工作のインターネットとアクアリウムのインターネットの違いを紹介します。

※この記事はフィクションです。怒らないでください。

電子工作 アクアリウム
初心者が質問すると 怒られる バカにされる場合がある
情報を検索すると 個人サイトが出てくる 専門メディアが出てくる
人気の動画 変態動画 Youtuberが活躍
情報の正確さ わりと正確 諸説ある

前提:趣味人口の構成

本題に入る前に、まず全体に影響を与えている前提をご説明します。

電子工作界は趣味人口のうち、職業上もプロである、つまり本職のエンジニアが多いです。彼らは学校/大学や会社で技術を学んでいるので、それなりの技術力を備えています。つまり初心者の比率が少ないのです。

一方でアクアリウムは、一握りのショップ店員やブリーダーを除けば、ほとんどの人が趣味でやっている業界です。なので初心者が非常に多い業界であると言えます。

以上を念頭において、この先をお読みください。

初心者が質問するとどうなるか

電子工作 アクアリウム
初心者が質問すると 怒られる バカにされる場合がある

検索でたどり着いたYahoo!知恵袋等でよく見られる光景です。

電子工作の熟練者は学校や仕事で技術を覚えた人が多いため、技術のない者は「さぼっている」「勉強すべき」と捉える傾向があります。また、純粋なホビイストと比べてガチで勉強し短時間で技術を身に着けているため、自身が初心者であった時間が短く、初心者に感情移入しにくいです。そのため初心者が低レベルな質問をすると、「そんなこともわからんのにやっているのか」という感じですぐ怒られます。
あと、電子工作は電気を扱いますので、失敗すると燃えたり、感電して死んだりします。なので見よう見まねで適当にやっているような初心者には厳しいというところもあります。ある意味で正義感に基づいた罵倒であり、考えようによっては愛のムチと言えるかもしれません。(とはいえ少し優しくしてもいいとは思いますが)

一方でアクアリウムは趣味でやっている人が圧倒的に多いので、比較的初心者に寛容であるように思います。優しく教えてくれる人の割合が電子工作より高いです(もちろん電子工作にもそういう人はいます)。
ただ、アクアリウムにも、初心者をバカにしてくる人はそこそこの確率でいます。彼らは電子工作における「危険だから」のようにちゃんとした理由があるのではなく、単純に性格が悪いので、レジャーとして初心者いじめをしてきます。(魚といえど命を扱うので、という側面はもちろんあるのですが、バカにしてくる人の言動には命への敬意も感じられないことが多いです)

不快な気分にさせられる頻度はアクアリウムの方が少ないですが、いざそうなったときの不快度はこっちの方が高いです。

検索した時に出てくる情報源の傾向

電子工作 アクアリウム
情報を検索すると 個人サイトが出てくる 専門メディアが出てくる

電子工作について検索すると、出てくるのはたいてい昔ながらの手打ちHTMLのサイトか、ブログか、Qiitaです。手打ちHTMLのサイトは昔から電子工作をやり続けている人がやっているサイトで、年月による蓄積があるので情報量が多いです。Qiitaはソフトウェアエンジニア出身の人がIoTブームで始めたパターンが多く、初心者視点の情報が載っているので参考になります(ただし情報が間違っている場合もある)。ブログはその中間です。

いっぽうでアクアリウムについて検索すると、たいてい大手のアクアリウム情報サイトに行きつきます。たくさんの情報がまとまっており、関連記事を読んで延々時間をつぶすことができます。

この差異の理由は両業界の熟練者がどこにいるかを考えるとよくわかるのですが、電子工作の熟練者は企業のエンジニアなので、プロとして得た情報を外部に漏らすと機密事項の漏洩になる人たちです。必然的に情報発信をするのは業務としてではなく趣味の活動に限定され、個人サイトの割合が増えます。この場合、個々の局所的なトピックでは情報がよく見つかりますが、網羅的な情報源がないので難儀することがあります。

アクアリウムの場合は比較的プロが多く情報発信しています。初心者が多い業界なので、初心者向けの情報を発信して、生計を立てる/事業として成り立たせることができるのです。ショップが運営しているサイトの場合もありますし、アフィリエイトで成り立つメディアもあります。いずれにせよ業務としてやっているサイトなので、情報がよくまとまっており、網羅的でわかりやすい場合が多いです。大変助かります。

もちろんアクアリウムの個人サイトもたくさんありますが、メディアの方がSEO的に強いので、あまり目立ってきません。

人気の動画

電子工作 アクアリウム
動画 変態動画しかない Youtuberが活躍

上記のWebサイトと説明が重複する部分もありますが、電子工作の熟練者は業務上で発信を行いませんので、動画も趣味でアップロードされたものが大半です。また、仕事とは違ったことをやりたいというモチベーションで制作されるので、ちょっと変わった作品が多いです。
あと、普通に電子工作をしている様子(回路設計とかはんだづけとか)は地味なので、動画として面白くないです。なので完成品を見せる動画が中心になります。完成品の面白さで勝負することになるので、作品がエクストリーム化していきます。
結果、電子工作で人気の動画は、ニコニコ技術部のように変態的な作品が多いです。

ニコニコ技術部とは (ニコニコギジュツブとは) [単語記事] - ニコニコ大百科


一方でアクアリウムは初心者がたくさんいてノウハウを欲しているので、彼らに知識を教えるYoutuberがたくさん活躍しています。
あとアクアリウムは、自分ができないことの代替行為としてYoutuberが世話をしている様子を見て楽しむという側面があります。どんなに楽しくても魚の世話を一日中することはできないですし(一日中ずっと水を替えまくっているとかえって魚は死んでしまう)、家で飼育できる魚の種類にも限界があります。そういったときにYoutuberが水槽の世話をしたりいろんな魚を飼っているのを見て、楽しむのです。

また、熱帯魚の画像は単純に絵としてきれい、魚の生態が見られるので熱帯魚を飼育していない単なる生き物好きの人にも見られる、等の理由から、再生数が伸びやすい傾向もあるかもしれません。つまり儲かるので、電子工作に比べるとYoutuberを目指す人口が多いわけです。

情報のばらつき

電子工作 アクアリウム
情報のばらつき わりと正確 諸説ある

これは人の問題ではなく扱う対象の問題なのですが、電子部品は動作原理がわかっているので、情報の正誤が明確です。また学問として確立されている分野でもあるので、知識体系が整理されています。なのでどこに載っている情報も、割と正確なことが多く、ブレが少ないです。ただし初心者の書いたQiitaは要注意です。

一方でアクアリウムは生態系を扱う趣味なので、不確定要素が多く、再現性に乏しいです。「○○をしたら××する」とはっきり言えないところがあります。「〇〇をした」意外のいろんな要素が絡んで環境は変化するからです。
そのため、書いてある情報はメディアや人により違いが大きく、いろいろ読んでみるとだいたい「諸説あるな」という結論に落ち着きます。これは不正確な情報が多いというよりも、確かなものなど何もない、という印象です。

以上です

特に結論はありません。同じ趣味のインターネットでも、こういう文化的差異が生まれてくるのは面白いですね。

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