念仏機をUSB給電に改造する

念仏機をもらった

知人に中国土産で念仏機をもらいました。念仏機というのは上の動画を見てのとおり、電源を入れるとお経が流れるマシンです。
僕も以前台湾に行ったときに買ってきたのですが、それはこういう

携帯ラジオみたいな地味なやつでした。これでも結構探すのが大変で、店で聞いても「今どきはCDがあるから…」って言われるばかりで置いてないんですよね。かなり探したのち、大通り沿いの地下にある巨大な日用品店でようやく発見しました。それも10年前の話なので、いまどきはMP3になってるのかも。

とにかく地味なものでさえなかなか見つからなかったのに、世の中にはこんなサイケなディスプレイ付きのものまであったとは。

youtu.be

f:id:slideglide:20180819003041g:plain

暗いところで使うとよりありがたさが増します。
ちなみにお経は複数収録されていて、ボタンで切り替えることができます。全部で168種類。過剰!

f:id:slideglide:20180817220812j:plain

選曲しやすいように液晶でお経の番号が出ます。

f:id:slideglide:20180817220901j:plain

裏側にも何か梵字っぽいものが書かれています。

こういう大変ありがたい機械なのですが、一つだけ難点があります。
僕が前から持っている携帯ラジオみたいな念仏機は、電池で動くため持ち運びすることができます。しかしこの念仏機はですね

f:id:slideglide:20180817220927j:plain

電源がコンセントなんですね。これだとちょっと旅行とかに持って行きづらいので、USB電源化することにしました。モバイルバッテリーで鳴らせるようにします。

分解する

というわけで、とりあえず開けました。

f:id:slideglide:20180817221107j:plain

これは台座の部分を開けたところです。まんなかにあるのがスピーカーです。その左上の茶色い基板は、AC100VをDC5Vに変換してフタ側についている半円形の基板に送っています。

f:id:slideglide:20180817221140j:plain

ACDC変換部のアップ。

で、そのフタ側についている半円の基板というのが、念仏機のメイン基板です。お経を鳴らしたり後光を光らせたりしています。これがDC5Vで動いているということは、USBと同じ電圧なので改造していく上でたいへん好都合です!

続いてディスプレイ面の方はどうなっているのか開けてみます。

f:id:slideglide:20180817222005j:plain

カラフルな円盤がありました。ディスプレイの表面は放射状にスリットの入ったパネルになっているのですが、その後ろでこういう円盤が回ることによって、後光が発射されるような視覚効果を生み出しています。

ところでこの円盤はどうやって回しているのでしょうか。回転がかなりゆっくりなのですが、ギアーが入ってるような動作音がありません。そんなにゆっくり回るモーターってあります?

円盤の奥を見てみると…

f:id:slideglide:20180817222049j:plain

なんとこのモーター、さっきのACDC変換基板を通さず、そのままAC100Vが引き込まれています。そんなことってある…!?

f:id:slideglide:20180817222744j:plain

知人によるとこれはシンクロナスモーターという種類のモーターなのだそうです。

少し説明すると、モーターって電磁石の極性を高速で反転することによって回るんですね。
その反転のやり方にいろいろあって、まず普通のミニ四駆とかのモーターは、モーターの軸の回転を利用して2つの電極に交互にコイルを触れさせることで、極性を反転させています。(かなりざっくりした説明。詳しくはこちらのサイトを見るとよくわかります。)
あとは電子回路で反転させるブラシレスモーターというのもあるのですが、いっぽうでこのシンクロナスモーターというのは、モーター内で極性を反転させないで、交流電源の交流をそのまま使って回るモーターなのだそうです。特徴としては、ギアで減速しなくても回転がすごく遅い。

このあたりあんまり詳しくないので間違っていたらすみませんが、とにかく、一つ分かったことがあります。このモーターを回転させるには交流電源が必要=USB電源(直流5V)では無理!ということです。なるほど、そうきたか。

作り直し

このモーターを何とかするのは無理そうなので、もういっそのこと取り換えることにしました。

f:id:slideglide:20180817231235j:plain

これは電子部品屋とかロボットショップでよく売られている安いギアードモーターです。モーター自体はミニ四駆とかと同じDCモーターですが、ギアが入っていてゆっくり回ります。

f:id:slideglide:20180817222200j:plain

シンクロナスモーターを外して…

f:id:slideglide:20180817233624j:plain

こっちに付け替えました。

ギアが入ってるので少し動作音が気になりますが、ケースを開けてグリスを挿したら少しマシになりました。これで一度、動かしてみましょう。

youtu.be

早っ!!

PWM

回転が速すぎて、後光というよりワープ中みたいになってしまいました。もうちょっと回転を遅くするにはどうしたらいいでしょうか。ギアを追加する…というのも困難なので、ここはPWMで制御することにします。

PWMというのは Pulse Width Modulation の略で、要は電気を流したりやめたりを高速で切り替えることによって、モーターをゆっくり回す技です。電気を流しっぱなしにすれば速く回るモーターでも、高速にON/OFFすることで電気の流れてる時間が50%になれば、回転も鈍くなる。そういう理屈です。

f:id:slideglide:20180818004803j:plain

まずはArduinoで実験、そのあと基板に実装しました。ArduinoでPWMをやるのは実に簡単で、analogWrite() 一発です。

void setup() {
  pinMode(11, OUTPUT);
}
void loop() {
  analogWrite(11, 150);
}

Arduinoの出力ピンにそのままモーターをつないでも電流不足で回りませんが、MOS-FETという部品を使うと、出力ピンに同期してモーターをON/OFFさせることができます。(詳しくはここ参照

基板の回路はこんな感じです。MOSFETはNchとPchの2種類あり、今回はNch用。

f:id:slideglide:20180818235053p:plain

これ普通はMOSFET周辺に2つくらい抵抗を入れるのですが、省いてしまったので参考にしない方がいいかもしれません。

マイコンは昔買ったATTiny2313が大量に余っているので使いました。(Arduino IDEからプログラムを書き込む方法はこちら

さらに、例のメイン基板の5V電源もここから出すようにします。

f:id:slideglide:20180818235458p:plain

こんな感じに収まりました。

f:id:slideglide:20180819000732g:plain

上のGIFは、作った基板にモバイルバッテリを接続しているところです。
GIFなので音は出ませんが、実際にはちゃんと音も鳴っています。これで回路的には完成です!

電源ケーブルの換装

f:id:slideglide:20180818222331j:plain

不要になった電源ケーブルを外して、USBケーブルに付け替え。本当はマイクロUSBの口をつけたかったのですが、部品がなかったのでUSBケーブルを直付けすることにしました。家に余っていたUSBケーブルの片側を切って、基板に接続していきます。

f:id:slideglide:20180818223923j:plain

スイッチ回りも整理して、不要になった部品を除去。新しい基板は余計な部分をカットしてマスキングテープでケース内側に貼りました。

f:id:slideglide:20180818224530j:plain

以上で、念仏機のUSB電源化が完了です!

youtu.be

ギアードモーターになって動作音が気になるかと思いましたが、それより大きな音でお経が鳴るので特に気になりませんでした。

モバイルバッテリーが使えるので、これでどこに行くにも念仏機を携帯できそうです。その気になればな。

余談

Amazonを見ていたら、今回の念仏機に似たものはありませんでしたが、液晶付きのものがありました。

これはこれでゲームボーイみたいでガジェット感高くて良いですね。