Arduino、Raspberry Pi等で使える1000円以下の安サーボモータ比較~我々はどのサーボを使うべきか

※結論だけ知りたい人は「結論・あなたはどのサーボを使うべきか」を読んでください。

電子工作はじめる時って、よーしIoTやっちゃうぞーみたいな感じでRaspberry PiなりArduinoなりESP-WROOM-02なりとセンサ組み合わせて、部屋の明るさとか温度とかを自動でTweetしたりするじゃないですか。作った時は「うおースゲー」と思って満足感高いんですけど、1週間くらい経って改めて見てみると「…で、何?」って感じになるんですよね。出先からTwitterで、へーいま俺の部屋18度かーって確認してみて、「…で、何?」っていう。

そんな時におすすめしたいのが、サーボモーター(以下、サーボ)です。サーボを使えば部屋の温度をTweetするのと同レベルの電子工作に、少しの生活雑貨を組み合わせるだけで


しょうゆをかけすぎたり


メガネに指紋をつけたり


メガネを発射したりできます。

まあ、それはそれで「…で、何?」っていう話ではあるんですけど、通行人が振り向くくらいの派手な「…で、何?」が実現できます。

パソコンユーザーが電子工作はじめるときの最大のロマンチシズムって、「いままでパソコンの中でしか動かなかった俺の創作物が、リアルの世界に飛び出てくる」っていうところだと思うんですよ。やっぱり醍醐味としては「プログラムが現実世界に影響を及ぼす」っていうところにあって、そうするとセンサーみたいにINPUTをフィジカルにするより、OUTPUTをフィジカルにした方がおもしろいんですよね。なんなら両方使って「どこにいても自室の室温が18度以下になった瞬間にメガネが飛び出す」みたいなこともできるし。そこでOUTPUTを担ってくれるのが、サーボです。

サーボモーターとは

サーボというのはモーターの一種ですが、ミニ四駆に入ってるみたいなぐるぐる高速回転するモーターと違い、回転軸を指定した角度で固定することができるものです。「90度で止まれ!」と言えば90度の位置で止まります。静止中はある程度の支持力でその位置を維持してくれます。たとえば上の醤油をかける例でいうと、サーボにしょうゆ差しをくくりつけておいて、最初は0度の位置で止めておきます。それを90度に傾ければしょうゆがかかるし、0度に戻せばしょうゆ差しはまた直立します。こういうことが、ArduinoでもRaspberry Piでも、数行のコードで簡単にできます*1

僕は上記で挙げたようなサーボを使った作品をよく作っていまして、家に大量の在庫があります。

家のサーボ袋をひっくり返してみたところの写真です。いろんなメーカーのいろんなモデルが混じっており、この際どれが一番いいのか決めたろうじゃんということで本エントリの執筆に至りました。


サーボ選びのポイント

我々、ホビー電子工作家がサーボを選ぶにあたって、気を付けるべきことは下記です。

  • 入手性……価格と、買いやすさ。あと届くまでの早さ。Amazonや秋月でも買えますが、海外通販を視野に入れると選択肢が広がります。
  • ちゃんと動くか……180度までしっかり回ってくれないものもあります。あと止めたときプルプルして安定しないものもある。
  • ギアの素材……樹脂製か金属製か。最も壊れやすい部分なので耐久性に関わります。樹脂製は電源つないだまま手で無理やりゴリッと回すと即死です。自分ではやらなくても、たとえば作品展示中に子供が勝手に触って一撃で壊れたりする。
  • トルク(力の強さ)……動かす力、保持する力の両方に関わります

なおホビーユースなので下記の点は考慮していません。

  • ギア以外の部分の耐久性
  • 不良品率

また同じホビーでも、ロボット用とかになるとガチ度が変わってきますので参考にならないかもしれません。

以上の点に注目して、本エントリでは7つのサーボモータを比較していきます。たまたま家にあった7つですが、手軽に安く買えるものはだいたい網羅していると思います。


左上から、浅草ギ研 ASV-15MGTower Pro SG90Tower Pro MG90SEMAX ES08MAIIEMAX ES08DEGWS PICO/STD/FGWS MICRO/STD/F


Tower Pro SG90

見た目と付属品


付属品の写真です。見方は注釈にマウスオン(またはタップ)→*2

価格

Amazonだと1個712円、5個で2,280円(456円/個)、50個だと単価364円まで下がります
秋月で買えば1個400円(送料500円)です。

なお、並行輸入品として売られているものは偽造品の可能性が高いようなので気をつけましょう。→home - Tower Pro SG90, SG92R 侵害品の判定方法

スペック

トルク*3 1.8kg/cm (4.8V)
ギア 樹脂製
デジタル/アナログ*4 両方ある
サイズ(実測・mm)*5 W22.9×H26.9×D12.6
ケーブルの長さ 約25cm
ケーブルの方向*6

動作チェック

ここではArduinoと一緒に使うことを想定。Servoクラスを使って、0~180までの角度を指示したときに何が起きるかを自作のサーボテスターにて検証しました。

0~180の指示できれいに180度まわります。
いっぽう、一定角度で静止させたときに、プルプルというかジワジワというか、微振動するので不安な気持ちになります……。

コメント

安サーボといえばこれです。みんながよく使っている、スケルトンの青いやつ。
Amazonで買えてこの値段ということでとにかく入手性の良さが光ります。その特性を生かしてワークショップとかで配布部品として使われるケースも多いです。
一方でギアは樹脂だし小さいし静止時のジワジワもあって、頼りなさも頭一つ抜けてます。スケルトンの外装もおもちゃっぽくて不安を誘う一因。

あと、工作するうえでいっこ重大な問題があって、サーボって本体の左右についてる羽根というか耳というか、あの部分を土台に固定して使うんですけど、

そのすぐ下からケーブルが出てるから、適当に土台を作ると干渉するんですね。割とはまりがちなので何とかしてほしいです。

同じ型番でデジタルとアナログ両方のモデルがあるみたいです、デジタルのものは前面ラベルに記載あり。今回使用したのはデジタルでした(秋月で購入)。でもあんまり気にしなくていいように思います。


Tower Pro MG90S

見た目と付属品


SG90と同じですが、サーボホーンが黒い!

価格

[asin:B01MSRBCBR:detail]
Amazonだと1個売りはページはあるものの執筆時点で売り切れ、10個セットもちょっと高いですね……。

スペック

トルク 1.8kg/cm (4.8V)、2.2kg/cm (6.6V)
ギア 金属製
デジタル/アナログ デジタル
サイズ(実測・mm) W22.6×H28.1×D12.1
ケーブルの長さ 約25cm
ケーブルの方向

動作チェック


ふつうにやると0~180の指示できれいに180度まで届きません。これは不具合というより、パルス幅の仕様がArduinoのServoライブラリとずれているために起きている現象です。
実はServoライブラリはattachのときにパルス幅の下限・上限を設定できて(デフォルトは544~2400)、上限を上げてやると180度まで回るようになります。

#include <Servo.h>
Servo myservo;
void setup() 
{ 
  myservo.attach(9, 544, 2600);
} 

静止時の挙動は安定しています。

コメント

SG90の金属ギア版です。なにより入手性の悪さがネックですね。
プログラミング時に留意点があるのもちょっと面倒なところ。
形状の問題はSG90に準じますのであわせてお読みください。
SG90から最大の魅力(入手性)を引いた感じなのであまりグッときません。


EMAX ES08DE

見た目と付属品


価格

Amazonで3個3,999円。高いなー
僕が買ったAliexpressではES08DEそのものはもうないみたいで、ES08Dという似た型番のものが売られています。(違いは不明)
1個6$4個で19$

スペック

トルク 1.6kg/cm (4.8V)、2.0kg/cm (6V)
ギア 樹脂製
デジタル/アナログ デジタル
サイズ(実測・mm) W23.6×H24.5×D11.7
ケーブルの長さ 約25cm
ケーブルの方向

動作チェック


指示角度15~160までのあいだ動きます。
実際の可動範囲は0度~160度くらいまで。20~30度せまい印象。

コメント

指定角度と実際の角度がずれるのはMG90S同様、仕様かなと思いますが、180度回らないのはいただけませんね。

いい点としては、付属品の長いサーボホーンの使い勝手がいいです。
長いので固定しやすいですし、縦長の穴にM2~M3(M3は無理やり)のネジが入るので、ねじ止めしやすいのも最高です。
またこのサイズでは珍しく円型のサーボホーンもついていて、ねじ止めしたい時に穴を広げても強度が落ちないので重宝します。

あとはケーブルが出ている角の所に斜めの切り欠きがあり、ケーブルの取り回しがしやすくなっています。
細かい使い勝手に配慮されていて、好きです。ただ、これらの長所は次のES08MAIIも同じなので、正直こっちを買うメリットはないです。(さらに正直に言うと、これはES08MAIIと間違えて買いました…)

(追記)書き忘れたのですが、これだけ起動時にマイコンの誤動作を引き起こしました。原因はたぶんですが逆起電力*7というやつだと思います。電源線にダイオードを挟むと普通に使えました。(GIF参照)
ただ以前使ったときは起きなかったような気がするので、個体差かも。


EMAX ES08MAII

見た目と付属品


机が一部焦げているのでカモフラージュされ気味ですが、右のほうの黒いのもネジです。

スペック

トルク 1.6kg/cm (4.8V)、2.0kg/cm (6V)
ギア 金属
デジタル/アナログ アナログ
サイズ(実測・mm) W23.6×H24.5×D11.7
ケーブルの長さ 約25cm
ケーブルの方向

動作チェック


こちらは0~180の指示で0~180度ちゃんと動きます。静止時も安定。気持ちがいいです。

コメント

僕のお気に入りです。このあたりの大きさ/トルクでは、最近はこれしか買っていません。金属ギアで動きもよく、パルス幅もデフォルト設定で使用可。海外通販に抵抗がなければ正直これ一択ではと思います。
付属品、形状等でES08DEの長所も継承しているのであわせてご覧ください。あとは国内通販でもうちょっと手に入りやすくなれば…!


浅草ギ研 ASV-15MG

見た目と付属品


価格

Amazonで972円(+送料)
店頭だと千石電商とかツクモロボット館とかでも買えます。店頭のほうが安かった気がする。

スペック

トルク 1.6kg/cm (5V)
ギア 金属
デジタル/アナログ アナログ
サイズ(実測・mm) W23.5×H24.0×D11.7
ケーブルの長さ 約25cm
ケーブルの方向

動作チェック


0~180の指示で0~180度ちゃんと動きます。静止時も安定。

コメント

これはですね、形といい動きといい付属品といい、上で紹介したES08MAIIと同じもののような気がします。
違いとしては、パッケージに追加でものすごく小さいネジが3本入っています。サーボホーンの穴にピッタリです。用途によっては便利かも。
ES08MAIIを試してみたい人は、国内で買えるこれをまず買ってみるという手も。
※3年くらい前に買ったものなので付属品等変わってる場合があるかもしれません


GWS PICO/STD/F

見た目と付属品


価格

秋月で800円(送料500円)

スペック

トルク 0.7kg/cm (4.8V)
ギア 樹脂
デジタル/アナログ アナログ
サイズ(実測・mm) W23.0×H21.9×D10.0
ケーブルの長さ 約11cm
ケーブルの方向

動作チェック


指示角度13~165のあいだで、0~180度動きます。気持ちが悪い人はattachのときにパルス幅の下限・上限を設定すれば補正できます。(MG90Sの動作チェックを参照)
13以下を指定するとプルプルします。

コメント

秋月でおなじみのGWSサーボ。数十種あって全部紹介しているとキリがないので、たまたま家にあった2つをご紹介します。
型番の最後のFとかJRとかは仕様互換しているメーカーの名前で、ケーブルの色と90度のときのパルス幅(JRは1500uSec、Fは1520uSec)が異なります。

このPICOは一番小さいモデルで、このエントリで紹介している中でも最小。トルク0.7kg/cmという圧倒的な非力さといい、ピコという名前の響きといい、一番かわいいサーボです。

GWSサーボのいいところは付属品の豊富さです。これはサーボホーン6個付属(同時に一つしか使えないのになぜ同じのが2ペアあるのか)。
さらに、サーボ本体を固定するための専用部品がついています。他のサーボは本体横の耳?羽根?に穴が開いていてそこをねじ止めするだけですが、

GWSはハトメとクッション用のゴムがついていて、緩衝しつつ固定できるようになっています!(左の穴がクッションのみ、右がハトメも入れたところ)
これにどういうメリットがあるのか正直よくわからないのですが、なんか「おもてなし」感があってよいです。

完全に余談ですが、以前主力で使っていたため、拙宅にはこの製品の付属サーボホーンが山ほどあります。


GWS MICRO/STD/F

見た目と付属品


価格

秋月で1,100円(送料500円)
1000円超えました、すいません

スペック

トルク 1.8kg/cm (5V)
ギア 樹脂
デジタル/アナログ アナログ
サイズ(実測・mm) W28.1×H31.9×D14.1
ケーブルの長さ 約13cm
ケーブルの方向

動作チェック


指示角度15~179のあいだで、0~180度動きます。気持ちが悪い人はattachのときにパルス幅の下限・上限を設定すれば補正できます。(MG90Sの動作チェックを参照)

コメント

こちらは大きい穴のサーボホーンがついていて、穴にはM2のネジが通ります。べ、便利!それ用と思われるネジもついているのですが、なぜか1本しかないため対象物がちゃんと固定できません。使う場合は別途買い足しましょう。
PICOと同じ本体固定用の部品もついています。悪い点として、こちらはケーブルが横付きなのでSG90と同じ問題があります。

なんにしろ(紹介しておいてこう言うのもなんですが)正直このサイズは中途半端というか、これを買うなら同じGWSのS03N/2BBMG/JRのほうが、ひと回り大きいですが金属ギアでトルクも3.4kgなうえに100円安いです。


結論・あなたはどのサーボを使うべきか

以上、長々と比較してきましたが、結局は以下のサーボが個人的なおすすめです。
※個人の感想です。

初心者向け

  • 何でもいいから1個買って試してみたい。すぐに。……SG90
  • 1個買って末永く大切に使いたい……ES08MAII

慣れたら

  • ワークショップで使う等ですぐ大量に欲しい……SG90
  • 作品を作って発表したり展示したりしたい……ES08MAII、またはASV-15MG
  • 秋葉原に行くのでついでに買いたい……秋月に行ってSG90GWS製品どれか
  • ストック用部品にしたい……ES08MAIIまとめ買い
  • 豊富なラインナップから選びたい(もっと高トルクのが欲しいとか360度回したいとか)……秋月のカタログでGWS製品を漁ろう

ちなみに今回は手元になかったので載せてませんが、もうちょっと高トルクのものが必要な場合、僕はGWS MICROのコメントにも書いたS03N/2BBMG/JR(3.4kg/4.8V)またはS03T/2BBMG/F(7.4kg/4.8V)のものを買うことが多いです。

最後に大きさのわかる比較写真を載せておきます。(左上から紹介順)

長くなりましたが、こちらからは以上です。
サーボモーターを組み込む際の実践的なノウハウについては、またそのうち書きたいと思います。

おまけ:ケーブルの色の見方

メーカーによってケーブルの色が違うので最初は戸惑いますが、

おおむねこの2種類です。コネクタの配置は同じです。
赤が電源、いちばん色が濃いの(黒または茶色)がGND、残りが制御線、と覚えておけば間違いないです。

補足

  • 高さは、サーボの上のでっぱり部分(ギア含まず)まで含めて計っています。計測誤差もあると思うので目安で。


*1:ArduinoはServoがデフォルトライブラリで入っています。Raspberry PiはServoBlasterを入れると楽だけど、WiringPiでパルスを生成して動かす作例もネットで多く見られます

*2:写真の白い部品はサーボホーン。サーボの軸を別のもの(例えばしょうゆ差し)に固定するためのもの。その上にあるネジは、サーボ本体をどこかに固定するためのネジ。サーボホーンの右にあるネジは、サーボホーンをサーボに固定するためのネジです。

*3:自分では測れないのでカタログ値です

*4:よくわからないのですがデジタルのほうが精度がよく、消費電力が多いらしいです。両方使いましたが違いを実感したことはないです

*5:高さは、サーボの上のでっぱり部分(ギア含まず)まで含めて計っています。計測誤差もあると思うので目安で。

*6:ケーブルが本体のどっち側から出ているか。位置によっては固定するときに邪魔になる場合があるので

*7:モーターの起動時に流れる、逆向きの大きい電流